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2020年01月16日20:24

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「第四の手」

読書日記
「第四の手」(上・下)
ジョン・アーヴィング
 作
(新潮文庫)

主人公パトリックはゴシップTV局のレポーター。サーカス取材中にライオンに左手を食いちぎられ、その様子が全米に生中継されてしまう。屈指の技術を持つ変人外科医によって左手の移植手術を受けるが、移植された左手の元の持ち主の妻ドリスが、夫の左手を慕ってあらたに子供を作ろうとやってくる…。この設定で繰り広げられるコメディかなと思っていると、左手は再び切り離されて物語の前半が終わってしまう。

後半はプレイボーイの主人公の本気の愛と、迷いながらも少しずつ愛を受け入れようとする未亡人の心の動きを丁寧に描いて、最終的には心暖まる大人の恋愛物語だった。日本での取材シーンもあって面白かった。

しかし前半の奇矯な設定は後半になると何処へやら。あれだけ量を割いた外科医の人生も出てこない。未亡人ドリスも夫との思い出と子供への愛に生きる誠実な女性として描かれているが、そもそも移植された左手を亡き夫そのものと見なして、パトリックとの間に子供を作ろうとすることが異常な行動だ。せっかくの移植された手というおもしろそうな設定を途中で捨てて、純粋なるラブロマンスに収斂していくが、やはりほんとうは愛が書きたかったのだろうか。
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