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2019年12月18日19:41

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「カストロの尼」

読書日記
「カストロの尼」
スタンダール
 作
(角川文庫)

大量に入手した古写本を繙いて実話を解説する形で書かれたスタンダールの「イタリア年代記」シリーズ。以前読んだ岩波文庫の短編集「ヴァニナ・ヴァニニ」と重なっていない作品「カストロの尼」「ヴィットリア・アッコランボニ・ブラッチャーノ公爵夫人」のみ読んだ。

カストロとは地名で修道院があり、院長として権勢を振るうことになった絶世の美女と山賊出身でありながら勇敢な武人として活躍する若者との悲恋の物語である。
5/14の日記にも書いたが、稀代のストーリーテラーであるスタンダールの手にかかると、よくある貴族社会のスキャンダルも圧倒的に興奮する組み立てで飽きさせない。噂の美少女と恋い焦がれる男性たち、許されざる恋に落ちる二人、貴族間の抗争と戦争、教皇と政治など、西欧古典文学の定番がなぜこんなに面白いのか。何年にもわたって起きた事件を追っているから話の展開が早くなるというところはあるだろう。そのせいかあっという間に剣が刺さってどんどん死んでしまう。
ところどころでインターバルをとるようにストーリーを離れ、作者が原典の古写本や歴史的背景を解説してはまた本編に戻るなど心憎いばかりの演出。まさに古典的エンターテイメントの醍醐味を味わえるというものだ。
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