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2019年12月16日19:31

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「悪について」

<strong>読書日記
「悪について」
エーリッヒ・フロム</strong> 著
(ちくま学芸文庫)

「ネクロフィリア」「ナルシズム」「近親相関的固着」人間を衰退へと導くもっとも危険な三つの精神疾患について語られる。
「ネクロフィリア」は死を愛することであり、破壊・暴力的支配・殺人・無機への衝動であり、健全な生の育成とは真逆の状態である。人間がこの傾向を少なからず抱いていること、またファシズムが例としてあげられるとおり、かつて人類を多く支配してきたことに恐ろしさを感じる。
またナルシズムと母親との近親相関的な結びつきを、社会的な面から集団としてのその病理を解く。ネクロフィリア的傾向とも重ねて多くはヒトラーとナチズムの現象をもって例とされるが、われわれから見るとヒトラーを出すまでもなく戦前の大日本帝国が明らかにこの異常な疾患状態であったことに思い至る。
それより私としては個人的なナルシズムと近親相関的固着がまさに自分のことを言われているようで恥ずかしい。常に自分の都合しか考えていないし、母親と一体感を持ったまま育って神経症になるなど実に未熟な人格である。

最終章でこの論考の主題である自由と決定論についての展開がある。ここでフロムの言う自由はわれわれがふだん考えている自由とはやや違った趣がある。言われてみれば確かに人生は二者択一の連続で、その選択時に理性の働きを持って善を選ぶことによって、その後の人生を磐石にしていく。結果すでに悪を選ぶことが不可能になっている。これがおおいに自由という状態である。
人間は自由ではなく因果的に決定されている状態であるが、けっして不可逆ではなく自覚と適切な行動によって必然の軛を断ち切り、自由を獲得することができる。したがって自由とは必ず善性へ向かうものである。この点われわれの感覚からすると愚行を選ぶ自由も自由のうちなので、少しくらいなら堕落していてもいいんじゃないかと考えてしまうが、賢者は違うということである。
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