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2019年11月21日20:59

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「電信柱と妙な男」

読書日記
「電信柱と妙な男」
小川未明
 作
(平凡社ライブラリー)

童話・小説・エッセイなど膨大な作品を残した小川未明。同じ東雅夫編のちくま文庫文豪怪談傑作選「小川未明集」以来ひさしぶりに読む。
本書は『妖魔たち』『娘たち』『少年たち』『北辺の人々』『受難者たち』『マレビトたち』という分類でまとめていて、単に児童文学にとどまらず、童話と判然とした違いのつかない耽美幻想小説におおいに魅力がある。

表題作「電信柱と妙な男」は『妖魔たち』に含まれるが、夜中にひっそり散歩する電信柱というなんともユーモラスな綺想小説であり、妖魔な雰囲気とは程遠いおもしろさ。
『娘たち』『少年たち』となるとさみしい少年少女の周りに現れる亡くなった肉親のたましいといった、ヒューマニスティックな児童文学本流の話が多く、悪くはないがひとつのパターンを感じてしまう。

それに較べると『北辺の人々』『受難者たち』『マレビトたち』にみられる自由で絶望的な幻想文学の方に魅かれる。
イメージ本位の描写でかならずしも読みやすくはないが、暗く悲しく絶望的な話が多く、未明のペシミスティックな世界観をうかがい知ることができる。死と孤独と衰亡が基調である。

「老婆」:下宿先の老婆はつねに変わらぬ姿勢で火鉢の傍に座り込んでいて身動きもしない。ある日ふと病院のそばで見かけるがいつのまにか帰っている。この不思議な老婆の正体はしれないままである。
「櫛」:近所の女房連のなかで、鍋をかぶっているような重々しい髪の黒衣の女だけが仲間外れである。なんだかわからない呪文を吐いて櫛を投げつける。
このようになんだかわからぬままに放って置かれたような作品がおもしろい。

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