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2020年06月05日20:14

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エッセイ集585:「ファクターXとポスト・コロナ生活の矛盾」

<ファクターXとポスト・コロナ生活の矛盾>
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[ファクターX(考)]
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日本の新型コロナの人口当たりの感染者と死亡者数が、欧米諸国と比べて圧倒的少ないと言われ、その要因はまだ解明されておらず「ファクターX」と呼ばれています。

欧米諸国のように「都市封鎖(ロックダウン)」をしなくても、「自粛要請」だけで都市封鎖あるいはそれ以上の効果が生じている要因は何かということです。

まず欧米諸国を考えてみると、それは基本的には「契約社会」です。古くはキリスト教の聖書が神と人間との間で交わされた「契約」とも言われていますし、現在でも多民族が混在する欧米諸国では「契約」が社会秩序の不可欠な要素になっています。

したがって人と人との接触機会を減らすには、「都市封鎖」という法的(契約的)拘束力のある措置が必要となります。

一方、日本はというと、「関係性重視の社会」「共生の社会」といわれています。これもさかのぼれば、例えば仏教では、神のような絶対的存在を想定せずに、むしろ自然と人間の共生、人間同士の共生が社会の基盤になっています。

こういう社会では「都市封鎖」ではなく「自粛要請」というレベルでも、人と人との接触機会を減らすのに実効性が発揮され、これが「ファクターX」の一つの重要な要素であるとともに、ある種の美徳のように思われます。


[科学技術(考)]
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医療を含め現在の「科学技術」は基本的には、人間が自らを自然から独立した存在(比喩的には神)として、自然を鳥瞰しかつ自然に対峙するという基本姿勢を元に発展してきました。

その科学技術は、逆説的に言えば、人間の生活が環境に影響を与える位に大きな成果を生み、人間の生活の利便性を向上してきましたが、それには上記のようにキリスト教的な考え方が背景にあるとも言われています。

また医療について言えば、西洋医学では患部や症状に局所的に対応しますが、漢方では体の全体の調和を重要視するようです。


[ポスト・コロナ生活(考)]
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今後のウィズ・コロナ生活、ポスト・コロナ生活が色々と語られています。

その主流としては、新型コロナに対応するために接触機会の減少を図ることを契機として、従来の生産やサービスや日常生活に情報通信技術を導入したリモートでバーチャルな生活様式が提案されています。

ただこのバーチャルな生活様式は、従来の科学技術の発展の延長線上のものでもあり、おそらく従来にも増して欧米諸国に特徴的な「契約社会」の形成を増長することになるように思われます。


[ファクターXとポスト・コロナ生活の矛盾]
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現在提案されているポスト・コロナ生活は、一時的には資源・環境問題の緩和にも役立ち、一石二鳥のようにも思われます。

しかし、コロナを契機に「共生の社会」の重要さが見直されたにもかかわらず、コロナを契機にそれと反対の「契約社会」に向かうとしたら、そこには大きな自己矛盾があり、その自己矛盾は必ず長期的には顕在化するように思われます。

そういった根本的な議論がなされないまま、単純な流れの中でポスト・コロナ生活が提案されている状況には何か重要なものが欠けているように思います。

これからの人間の生活を考えるのに、コロナを利用するというのは、動機があまりにも不純だと考えるのは私だけでしょうか。
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