ＧＮＨ(國民總幸福量)に就いて

　喜馬拉雅(ヒマラヤ)の小國で、ＧＤＰ(國内總生産)に對する概念として、ＧＮＨ(國民總幸福量)を打ち出してゐるさうで、それについで仏蘭西(フランス)でも、ＧＤＰの計算法を見直し、医療福祉の充實や環境への貢献といつた幸福度を加へる提案を行(おこな)つてゐるとか。


　政府が国民の、

　「幸福度」

　を設定する理由は、それほど多くはないだらう。
　それを確かめる事によつて、もし高い數字が示されでもしようものなら、如何に現政權が國民に有効な政策を行つてゐたかを提示出來、選擧(せんきよ)時に國民に訴求力(アピイル)出來る絶好の機會(チヤンス)だから以外に考へられないやうに思はれる。


　大體(だいたい)が、

　「幸福度」

　を測定出來ると思つてゐる事が可笑(をか)しな話で、人によつてそれぞれ違ふ價値觀(かちくわん)を、どのやうにして測らうといふのだらうか。
　その意味では、皮肉な結果だが喜馬拉雅(ヒマラヤ)の國は、小國であるが故にそれを確認するのが極めて容易であるのかも知れない。
　それとは「ＧＮＨ(國民總幸福量)」の事である。


　だが、國民にそれを植ゑつける事は出來る。
　昔、多くの民を階級制度で縛り、それぞれに下の階級を示す事で、現状が如何に幸福であるかを説きながら爲政(ゐせい)者がそれを利用する。
　一番下の階級の人間にとつてはそれ以下がないので、その不満を解消する爲に更に下の階級を設け、それでも足らなくなると外國を侵略して植民地をつくり、その國の人を奴隷として本國へ連れて來て、この國の民はどれほど、

　「幸福」

　であり、統治される事が有利であるか、と目眩(めくらま)しにかけるのである。


　日本の東京や大阪に、

　「賭博場(カジノ)」

　を作らうといふ動きがあるが、忘れてはならないのは、一番儲かるのは博打をする國民ではなく、胴元であるといふ事で、それは、

　「寶籤(たからくじ)・競馬・競輪・競艇」

　なども同じ事で、その資金で困つた人々に援助の手を差し伸べてゐるからといふ美名に踊らされるならば、一番美味しい目をしてゐる獨裁者に

　「お前たちは私に支配されて幸せだ」

　と言はれてゐるのと同じ事になつてしまふ。
　彼らに北叟笑(ほくそゑ)ましてはならない。


　さう考へると、

　「幸福」

　とは得られた滿足感の事であり、それを導き出す爲には、子供に欲しいものを一度は與(あた)へておき、すぐに取上げて憤(むづか)る子供に、

　「言ふ事を聞くのならば、これをあげよう」

　と條件をつけてから渡すと、彼はとても滿足する事、請合(うけあ)ひといふ事になる。

　
　その上、他との差別化(區別ではない)で、自身が優位な地位にゐる事で得られる比較による、

　「優越感」

　も、より多くの「幸福」を感じられる筈で、

　「幸福感」

　とは「優越感」の事だと言つても良く、自國民の間でそれが無理ならば、ＧＤＰ(國内總生産)と同じやうに、他國との比較でそれを味ははせるしか方法がなくなつてしまふ。
　そんなもので國民のご機嫌をとらずに、もつとなすべき事をして欲しいものである。
　國民も、そんな事をするぐらゐならば、「幸福」や豐かにならなくて、質素でも良いと、個人個人が拒否權を發動するぐらゐの氣概を持つて欲しいものである。

　關連記事
幸福に就いて
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「幸福度」日本人の平均は6.5
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1191356&media_id=4