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2020年07月21日00:21

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通勤路の花々シリーズ309 蓮(ハス)

 被子植物門双子葉植物綱ヤマモガシ目ハス科 Nelumbo nucifera
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 インド亜大陸原産の多年性水生植物で、地中の地下茎から茎を伸ばして水面に葉を出します。草高は約1mで茎に通気のための穴が通っています。水面よりも高く出る葉もある点がスイレン目スイレン科植物と大きく異なる特徴です。葉は円形で葉柄が中央に付き、撥水性があって水玉が出来、これをロータス効果と呼んでいます。日本での花期は7〜8月で、白またはピンク色の花を咲かせますが、早朝に咲いて昼には閉じてしまいます。
 インドでは泥から生え気高く咲く花、真っ直ぐに大きく広がり水を弾く凛とした葉の姿が、俗世の欲に塗(マミ)れず清らかに生きる事の象徴の様に解釈されたため、インダス文明の頃から聖なる花とされて、地母神信仰と結び付いて神聖なる物の象徴とされていました。バラモン教の聖典『ヴェーダ』やヒンドゥー教の神話に於いても蓮は特徴的なシンボルとして繰り返し登場し、ヒンドゥー教の最高位の女神ラクシュミー(仏教に於ける吉祥天)は蓮女(パドミニ)だとされています。
 仏教でも仏の智慧や慈悲の象徴とされ、如来像の台座は蓮華を象った蓮華座であり、また厨子の扉の内側に蓮華の彫刻を施す場合も多く、主に寺院では仏前に常花(ジョウカ)と呼ばれる金色の木製の蓮華が置かれています。また、死後に極楽浄土に往生し、同じ蓮花の上に生まれ変わって身を託すという思想があり「一蓮托生」の言葉の語源になっています。密教に於いては吉祥天女を本尊として信仰する吉祥天女法という修法があり、蓮は特別な意味を持っています。
 なお、経典『摩訶般若波羅蜜経』には「青蓮花赤蓮花白蓮花紅蓮花」との記述がありますが、青い花は睡蓮のみに存在する色であり、仏典に於いては蓮と睡蓮は区別されず、共に「蓮華」と訳されているのです。近代になっても蓮と睡蓮は同系統の植物だと思われていましたが、現在ではかなり系統が異なる事が判明しています。
 英名のLotusはギリシア語由来ですが、元はエジプトに自生する夜咲睡蓮(ヨザキスイレン;Nymphaea lotus) を指した語です。
 中国でも、清らかさや聖性の象徴として称えられ「蓮は泥より出でて泥に染まらず」との成句が生まれています。
 日本へは仏教と共に伝来したとされていますが、実際にはもっと早くに伝来して野生化していた様で、夏の季語になっています。
 果実の皮はとても厚く、土の中で発芽能力を長い間保持する事が可能で、昭和26(1951)年に千葉市にある東京大学検見川(ケミガワ)厚生農場の落合遺跡で発掘された2000年前の弥生時代の実を大賀一郎博士が発芽させる事に成功した例すらあります。また、岩手県西磐井郡平泉町の中尊寺金色堂須弥壇(コンジキドウシュミダン)から発見された800年前の実も発芽に成功しており、埼玉県行田(ギョウダ)市のゴミ焼却場建設予定地から出土した実も発芽していますが、これは1400年から3000年前の物と推定されています。
 即ち、蓮は少なくとも2000年前には日本に伝来しており、場合によると既に3000年前に伝来していた可能性もある訳です訳です。
 蓮は繁茂し過ぎると他の水生生物に悪影響を与える懸念があるため千葉県の手賀沼(テガヌマ)等では駆除が行われています。水中の茎を切ると組織に水が入って腐り、再生しなくなります。
 地下茎は蓮根(レンコン)として食用になり、日本では茨城県と徳島県で多く栽培されており、中国では湖北省・安徽(アンキ)省・浙江(セッコウ)省等が産地として知られています。中国では、摺り潰して取った澱粉を葛と同様に、砂糖と共に熱湯で溶いて飲用する場合もあります。
 葉も食用になり、蓮の葉を蒸し上げて塩を加え柔らかくした物を細かく刻んで炊き立てのご飯と混ぜた物を蓮葉飯(ハスハメシ)とか蓮飯(ハスメシ)と呼び、盂蘭盆や一部の仏教宗派の祭礼の供物となる場合もありますが、一般的食材では無いですね。また似た物として蓮粥(蓮葉粥)なる料理もあります。
 中国の荷葉飯(フーイエファン)や東南アジアの蓮飯(レンハン)は、日本の粽(チマキ)の事で、粳米(ウルチマイ)や餅米(モチゴメ)等を様々な食材と一緒に蓮の葉で包んで蒸した物の事です。笹や菰(コモ)等で包む場合とは異なり、蓮を使う場合は宗教的意味合いを持っていました。
 蓮の実も蓮根と同様、澱粉が豊富であり、生食が可能です。若い緑色の花托が生食にはよく、花托は堅牢そうな外見に反し、スポンジのようにビリビリと簡単に破れます。柔らかな皮の中に白い蓮の実が入っており、種は緑色の団栗(ドングリ)に似た形状で甘味と苦みがあって、生の玉蜀黍(トウモロコシ)に似た食感を持ちます。また甘納豆や汁粉等としても食べられます。
 中国では餡として加工された物を蓮蓉餡と言い、これを月餅(ゲッペイ)・最中(モナカ)・蓮蓉包(レンヨウホウ)等の菓子に利用されます。餡にする場合、苦味のある芯の部分は取り除く事が多く、取り除いた芯の部分を集めて蓮芯茶として飲まれる事もあります。越南(ヴェトナム)では砂糖漬けやチェー(Chè)の具として食べられます。
 また、蓮肉(レンニク)と呼ばれる鎮静・滋養強壮作用がある生薬としても用いられています。
 果実の若芽は、果実の中心部から取り出して、茶外茶として飲用に使われます。
 蓮を国花としている越南では、雄蕊で茶葉に香り付けした物を花茶の一種である蓮茶として飲用します。甘い香りが楽しめるとされ、嘗ては茶葉を花の中に挿入し、香りを茶葉に移していました。
 茎は撥水性の葉と茎がストロー状になっている性質から、葉に酒を注いで茎から飲む象鼻杯(ゾウビハイ)なる習慣もあります。越南では茎を茹でてサラダの様な和え物にして食べます。
 中国の蓮の一大産地である湖北省では、春から夏にかけて間引かれた若茎(葉の芽)を炒め物・漬け物等にして食べています。
 日本に於いても食べ易く切った茎を煮物の材料として用いる事があり、産地である秋田県では、茎を用いた砂糖漬けが作られています。
 茎の表皮を細かく裂いて作る糸を茄絲(カシ)と呼び、茎の内部から引き出した繊維で作る糸を藕絲(グウシ)と呼んで、どちらも布に織り上げるて利用される場合があります。
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