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2018年11月18日22:48

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外交と世論

 このところ、日本外交にかかわる本を何冊か読んで、世論がいかに外交政策に影響を与えているのかが分かってきた。明治時代の条約改正も、それが成功したか、失敗したかは改正案の優劣や交渉の進展で決まったわけではない。改正案が漏れ、それに対して議会やメディアから反対する声が高まり、外相辞任、そして交渉が継続できなくなるということが続いた。それに対して、政府内や議会に根回しを行い、リークも防いだことによって条約改正を実現させたのが、陸奥宗光だった。

 日韓国交正常化交渉が長期に及んだのも、全体を通じて世論の支持が得られなかったからというのが大きな要因だった。日中国交正常化は、財界からも強い要望があり、世論の熱狂を受けてあっという間に実現させた。外交当局も、二つの国交正常化交渉に外相としてともに関わったのが同じ大平正芳だったことから、交渉手腕に大きな違いがあったわけでもない。

 最近でいえば、2002年に当時の小泉純一郎首相が、電撃的に訪朝を果たし、首脳会談を行い、日朝平壌宣言に署名した。これも本来であれば、国交正常化の第一歩であるはずだった。しかし、世論は拉致問題に関心を集中させることになり、国交正常化交渉は行き詰まってしまった。

 外交は軍事と並んで専門性の高いセクションという意識が、かつては強かった。それゆえに、戦前に政党政治の時代がやってきても、外相は陸相、海相と並んで、政党員以外から任命されていた。
 けれども戦後の外相は多くが国会議員から選ばれるようになっている。そして外交政策もまた、政権の支持不支持に強く影響を与えることになった。

 現在、安倍政権が取り組みをはじめているのが、ロシアとの平和条約締結である。これには北方領土の復帰が前提とされているため、過去からほとんど進展がない。
 そもそも、平和裏に領土が戻ってきた例というのは、アメリカから小笠原諸島、奄美諸島、そして沖縄諸島が返還されたくらいしかない。そして返還後も、軍事基地などがそのまま残されている。つまり、無条件で領土が戻ってくるようなケースは、あまり期待できないというのが現実だ。
 北方領土の場合、四島返還にこだわる限り、おそらくロシアとの平和条約調印は、今後も望み薄だといえる。しかし、北方領土を放棄するようなことは世論が許さない。そのため、二島返還を先行させるという折衷案で、平和条約を結べないかという模索も続けられている。安倍政権もまた、その路線で条約交渉にもっていこうとしている。

 ロシアと日本は、それこそ明治時代から、難しい関係が続いている。利害が一致すれば、交渉も進展するけれども、その前提が変われば、両国関係も一気に悪化する。
 そういうなかで二島返還を先行させることは、世論から強い反発を受ける可能性もある。ロシア外交はしたたかだというイメージも強いから、警戒感も出てくる。
 それでも敢えて、懸案の平和条約調印に動くのか、あるいは世論の反発を受けて断念するのか。外交と世論の関係は、21世紀においてますます密接なものとなっている。
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