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2019年12月12日00:02

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いわしアクション映画日記VOL.800『Bruce Lee in G.O.D死亡的遊戯』

若くしてで逝去した不世出の格闘俳優ブルース・リーの遺作となった『死亡遊戯』の未公開フィルムをもとに作り上げたドキュメンタリー風アクション作品。

香港では今や推しも推されぬスターとなったブルース・リー。
新作の予告となるラッシュを見ていた彼は自身の格闘人生の総決算となる壮大な作品の企画を考えていた。
その作品の題名は『死亡的遊戯』。
しかしあまりに荒唐無稽な企画と『死』という不吉な文字を扱う題名に彼の周りからはなかなか承諾を得られず、忍び寄る病魔と進まない企画の進行にリー自身もナーバスになってきていた。

そんな中彼は自分を応援し師事するひとりの少年に出会う。
時代がカンフー映画に斜陽化していく中で真摯にカンフーを学ぶ彼の想いに心をうたれたリーは自分の想いを遂げるべくラストの格闘シーンを撮影。そしてその最中に念願であったハリウッド作品『燃えよドラゴン』の撮影へと旅立つ。

『燃えよドラゴン』を作り上げたリーはいよいよ『死亡的遊戯』の本格的再開をめざすが、その矢先にリーは非業の病死を遂げる。

最後に残された彼の想いが詰まった格闘シーン。
彼の死を悼むごく限られた関係者の前で公開されたそのフィルムに映し出された真の『死亡遊戯』とは…

噂されていた『死亡遊戯』の未公開フィルムがようやく日の目を浴びることを記念し、リーの想いを独自のドラマパートを付け加えることで作り上げたもうひとつの『死亡遊戯』。

元となる『死亡遊戯』は15分のリー本人による格闘シーンをもとに後を受け継いだサモハンの手腕とタンロンをはじめとするそっくりさん俳優によって作り上げた作品だが、今回発掘された未公開フィルムはそもそものコンセプトが『死亡遊戯』とは違っている。
国際シンジケート打倒のサモハン製作版と違い、リー本人が考えていたコンセプトは純粋に世界最強格闘王決定戦のような感じ。

そして本人出演シーンにおいて最も大きな違いは塔を登るのがリー以外に他に2人いたという設定。
一人は『死亡遊戯』でも冒頭に秒殺されていた初期ジャッキー映画でお馴染みの名脇役アクション俳優ジェームス・テイエン。
あと一人はチェン・ユアンというボディービル出身の韓国系格闘俳優。
基本的にはリーと彼ら2人が一緒に塔の刺客たちに挑むという流れである。

『死亡遊戯』では編集によってリー本人の対決だけしか描かれていなかったが、本作では彼ら2人と刺客たちの格闘シーンも描かれており、これだけでも観る価値は高い。

そして彼らとの格闘によって塔の刺客たちの強さもまた段違いの迫力をみせており、最もその恩恵を受けているのが2階にいる韓国合気道の達人チ・ハンツァイ戦である
『死亡遊戯』ではまさにリーの噛ませ犬的な扱いだったが、本作ではテイエンとチェン・ユアンを2人同時に手玉にとる鬼神のような強さを発揮。これを観ることで本来の彼のハプキドーの強さを再確認させられる。

そして最上階にいるカリーム・アブドゥール・ジャバールだが、本作ではもはや人外の魔物として描かれていて、このコンセプトを知ることで元の作品でもなぜ明かりを嫌うのかがわかる。
さらにダニー・イノサント戦でもリー以外の2人が戦うシーンが追加されていて、ティエンはこん棒を、そしてチェン・ユアンの武器はなんと丸太でイノサントと対決。リーのおぜん立てではあるが、珍しい武器格闘シーンといえる。

こうしたアクションシーンの迫力や魅力もさることながら、本作が有象無象のドキュメンタリー風作品と違うのはメインのフィルムにまでにいたるドラマパートも秀逸に作られていること。
リー役は似てはおらず声も吹き替えではあるが、味のある演技で見応えがあり、かなりドラマの内容にも引き込まれる。

もちろんドキュメンタリー作品として在りし日のリーのエピソードも語られているのだが、その案内役として映画版ではユン・ワーが、DVD版ではユン・ピョウが務めておりリーが思い描いていた本当の『死亡的遊戯』の企画を解説してくれている。
そこではそもそも戦いは五重塔で行われる予定で各階に達人たちを用意していたとのこと。
明かされたエピソードでは塔の手前に組織の部下たちがおり、1階には蟷螂拳の達人、2階にテコンドーの達人でそこにはあのウォン・インシクを考えていた様子。さらには詠春拳の達人なども想定していたらしく案外バッタもんで不評だったブルース・リィの『新・死亡遊戯』のコンセプトも間違いではなかったのかもしれない(笑)

ブルース・リーに関する伝記ものや未公開フィルム紹介作品は他にもいくつかあるが、本作はそのジャンルに含むより、やはり『燃えよドラゴン』の未公開フィルムを使って作り上げたオリジナル作品『死亡の塔』と同系列と見るべきだろうか。
しかしその完成度は非常に高く、何よりもリーへのリスペクトに徹しているのがブルース・リーのファンとしては嬉しい。

貴重な格闘シーンのNGシーンでおどけたり、より良い構図のために撮影監督と一緒にカメラをいじるリーの姿もあり、ストイックな格闘俳優としてのイメージでなく実は陽気で人間臭いリーの人柄も伺い知れるなどファンでなくとも見る価値ある秀作である。


評価…★★★★★
(リーもジャッキーに負けないくらいいい笑顔とNGでのおふざけをするんですね〜)



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