東アジアの糞喰い民族

mixiニュースでウンコネタがあるとすぐネトウヨさんが嬉々としてトンスラーだの糞喰い民族だの言い始めますよね。
グソクムシのニュースだとほぼ確実に誰かが「隣の国にはクソクイムシが」とかあられもないヘイトスピーチを始めます。

ネトウヨさん達によれば、韓国には食糞文化があるそうです。
でもソレってソースとかあるんですかね…
あるならネトウヨさんが貼りまくってすぐに見つかりそうなものですが、これが見つかりません.
まぁ確定事項とされたことにすらまともなソースがないのはネトウヨさんにはありがち…
あやふやな話を引用しあう、相互参照によって成り立つ世界ですからね。

Wikipediaにはかつて『朝鮮における人糞利用』なる項がありましたが、その後消されてます。

ネトウヨさんの親玉である我らが百田尚樹先生ですら『今こそ、韓国に謝ろう』の中でトンスルのソースがはっきりとはわからないことを認めています。

…ではどの様に事実が捻じ曲がっていったのか？
探すとその経緯は簡単に見つかります。
今回はそれらを紹介していきましょう。



ソースはこの辺です。

・韓国の郷土料理「ホンタク」は人糞料理？ その1
from ネットウヨのガセビアを指摘するスレ その4
http://blog.livedoor.jp/gasevia/archives/19683644.html

・韓国の郷土料理「ホンタク」は人糞料理？ その2
from ネットウヨのガセビアを指摘するスレ その5
http://blog.livedoor.jp/gasevia/archives/20885255.html

・嫌韓厨は呼吸するようにガセビアを捏造する。これらの捏造中傷は氷山の一角
from ネットウヨのガセビアを指摘するスレ その5
http://blog.livedoor.jp/gasevia/archives/21136372.html

・ネトウヨが多用する嫌韓デマのいくつかを検証（「朝鮮が中国に毎年美女三千人を朝貢」など）
from ネットウヨのガセビアを指摘するスレ その5
http://blog.livedoor.jp/gasevia/archives/21508221.html

・誰かの妄想・はてな版
トンスル、その他の漢方薬関連の無知を基にした嫌韓差別都市伝説の考察
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20090920/1253462347




●ネトウヨさんの主張：１
『エイを人糞漬けにした「ホンタク」という料理がある』


【真相】

●ホンタクはホンオフェ（洪魚膾・エイ刺身）とタクチュ（濁酒・マッコリ）の組み合わせのこと。
ホンオフェ（発酵エイの刺身）をつまみにマッコリを飲むことを「洪濁（ホンタク）」という。
ホンオフェは激烈な発酵臭があるが、もちろん人糞漬けなどではない。
主に松葉や米糠でできた堆肥の熱で発酵させて作られる。
昔は藁に包んで堆肥に入れて作ったが、最近は刺身を入れた壷を堆肥の中に入れるらしい。
この堆肥を「トン똥」（漢字にすると「糞」）と書いたのを誰かが人糞だと勘違いしたらしい。
トンには日本で言うところの「糞」という意味もあるが「堆肥」という意味もある（「糞」の字源は「畑にばら撒くもの」）。

１０年前から
『これが人糞料理なら納豆も人糞料理って事になる！（笑）』
『納豆は“腐った大豆”なんだが、欧米で“腐敗物を平然と食べる日本人”なんてやられたら
ウヨはどう反論するだろうかｗ』
とツッコんでる人もいたのに、デマばかりが拡散して真相はあまり語られない…オカルトと同じ図式ですね。

ちなみにネトウヨさんは「人糞漬のホンタクが無いとはいえない」などと主張。
…それなんて悪魔の証明？
なお、出してくれる人や店も不明、誰も見たことがなく、動画も写真も存在しないのに、それでもネトウヨさんは「ある」と主張。
『これは存在や証拠が確認されていない神を崇める信者と同じ主張や行動であり、 よって「糞漬けホンタク＝嫌韓厨の神」という図式が成り立つ』
などと揶揄されててワロタ。



●ネトウヨさんの主張：２
『韓国人はトンスルという糞酒を常飲している』


【真相】

●「スル」は酒の意で、「トン-スル」で「糞酒」となる。
”大便をふんだんに入れた酒”とかいうのはデマ。
入り口を塞いだ竹筒を大便の中に浸し長時間置き、中に滲み出てきた液体をとって酒に入れたものが「トンスル」。

●同じものが李時珍の「本草綱目」で「糞清」と呼ばれているし、江戸時代の医学書「用薬須知」の6巻（人ノ部）には「人中黄」が載っており、「大便ノ汁ナリ」という説明がある。

●「用薬須知続編」の3巻には、大竹を切って一方の節を残し、大甘草を入れて円形の木片でこれを塞いで、隙間は蝋で埋める。これを糞の中に入れて一ヶ月おいて取り出し乾かす、こうして出来たものが人中黄、とある。
「トンスル」は竹筒内にしみでた液体を酒に入れて飲む部分が違うだけで、基本的には人中黄と同じ。

…これただの漢方薬やん…
つまり中国から朝鮮経由で日本にも入ってきている訳で、これを「糞食文化」とするなら中国にも日本にもそれはある、ということになるんですが…。

一方、日本では…
ソースに挙げた『誰かの妄想・はてな版』によれば、

――――――――――――――――――
『「落し紙以前」（斉藤たま、論創社、2005）には、東北の一地方では便器の内側についたカスを虫歯の穴につめる民間治療があったり、病気の子供を治すために牛糞でくるむ話があったり、「トンスル」同様の方法でとった「糞清」？を病気の治療に使う話などが紹介されている』
――――――――――――――――――

だそうですよ…やっぱ日本でも飲んでたんじゃねーか！

ちなみにそこのコメ欄ではこの辺を無視して「朝鮮国王は野人乾水という人糞を使った薬を飲んだ記録あるけど、日本は本に載ってただけで飲んだ記録はないだろ」と騒いでる人が…
いや、結局「トンスル」同様の方法でとった「糞清」は使用されてたし、他にも大便を薬として使う例が紹介されてますやんか？
「人糞の漢方薬は日本には書物で伝わっただけで飲んではいない」と主張されるならそれはそれで構いませんが、それだと記録にある日本の人糞の薬は全て日本が独自に編み出したオリジナル、ということになりますが、それで良いんですね…？


あとネトウヨさんたちが主張する様に、現代の韓国でトンスルを常飲する文化はあるのでしょーか？

チャンネル桜で番組司会もやっていた保守派論客、古谷経衡の著作『ネット右翼の終わり―ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』
にはざっくり要約するとこうあります(p.121〜)。

●狭義のネット右翼が「朝鮮人は糞喰い土人」などと盛んに喧伝。
●もともとのソースは2009年にネットで『ロケットニュース』が記事にしたこと。
　「韓国に嫁いだ日本人女性のブログに紹介されている」という出典不明の伝聞形式で根拠なし。
●ムック『呆れた！　韓国』で映像ディレクターが真偽を確かめるために現地で探すも見つからず、韓国漢方の専門家に頼ってようやく作ってもらい試飲。
専門家も作るのは人生で初めて。
→つまり「韓国人はトンスルを飲んでいる」という事実はなかった。


…なんじゃそりゃ！？
結局ソースは出てこないし、「実際に飲んだ」っていう人の記事も要するに「『探偵ナイトスクープ』に依頼して作ってもらった」レベルの話やんけ。

要は子供の不毛な言い争いによくある
「空飛ぶ船なんてないも〜ん」
「あるも〜ん」
「ないも〜ん」
「作ればあるもん」
というやつと一緒。
そりゃ作ればあるよ！　何言ってんのこの人たち…。

あとネット上では「そんなのネーヨ」と言う韓国人にネトウヨさんが「お前、知らないの？　お前の国じゃ糞酒飲んでんだぜ」と教えを垂れてたりしますが…
韓国人に韓国文化を語るのは何かおかしくないっすか？
住んでる本人ですら聞いたこともない文化を「ある」とか言っちゃって大丈夫？
いや、本当にマイナーな地域文化について海外の専門家が語る、とかはアリだと思いますよ？
でも韓国文化についての偏った情報をネットで聞きかじっただけのネトウヨさんがそんなコトして本当に大丈夫なんですかね…？

ではこういう状況を想定してみましょう。
あなたがいきなり海外の人に「日本人の女は馬とヤるのがお好みなんだろ？」と失礼なことを言われたとします。
あなたは「なんじゃそりゃ！？」と思いますよね？
すると相手は言います。
「お前、オシラサマ知らないの？」
ああ、まぁ「馬に恋愛感情を抱いた女性がいた」という話は伝承として一地方に残ってるけど…それ無茶苦茶じゃね？
ところがその外国人はこう言うのです。
「はぁ？　昔でも何でも『あった』ことに変わりはないだろうが。おまけにそれがわざわざ神格化されて今でも信仰を集めてるだろが。普通そんなことしねぇよこの変態民族が！」

…こんなんほぼ言いがかりやん…
トンスルについてネトウヨさんがしてるのって、こういうコトだと思うですよ？


よしんば世界のどこかに糞食する民族がいたとしても、それならそれで文化として尊重すべきことであって、差別の具にするのは全然違うよね…。
ただでさえ右寄りの人は伝統だの文化だのが大好きで、普段は世界的には「やめとけ」と思われている鯨類の殺戮をほぼ「文化ですから」の一言でスルーしがちなのに、「他者の文化を尊重する気などさらさらない」という態度に出ちゃうとその辺の説得力もガタ落ちです。

…ところが、ネトウヨさんの中にはその辺まで理解した上で
「いえいえ、ウンコを食べるのはそちらのお国の貴重な文化ですからどうぞ誇って下さいwww　pgr」みたいな嫌味に利用する御仁までいたりするので始末に負えません。

ソースに挙げた『誰かの妄想・はてな版』コメ欄にもこんなのがあります。

――――――――――――――――――
なぜトンスル？なぜトンスル？ 2012/08/09 12:45
トンスルを呑むのは止めた方がいいよ。
大腸菌群の量とアルコールの殺菌の程度によるけど、リスクはありますね。

まぁ、率直な意見として、、
「そんな臭い物を、わざわざ食する必要があるのか？」　
という、扱くまともな疑問にたどり着きます。

そして、、、
韓国の文化だから、否定はしない。　
存分に宣伝すればいいじゃないか。

以上。
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もいっちょ。

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脱糞脱糞 2012/08/25 18:49
世界に誇れる文化だと思いますよ,
なんで韓国はこれを押し出していかないんでしょう？万病に効くって聞きましたが
――――――――――――――――――


…まとめるとトンスルは
●「かつてあった」のは事実だが、それは中国から伝わった漢方薬としてであり、韓国に常飲する文化があったと考える理由はない。
●トンスルと同様の薬は日本にもあった。
●そもそも洋の東西を問わず、近代医学以前の療法には今の目で見ると奇妙なものが多い。
●現在、トンスルを作っている人はいない。
…ということになります。



●ネトウヨさんの主張：３
『韓国には嘗糞という娯楽があった』


Wikipediaにかつて存在した『朝鮮における人糞利用』の項にはこうあります。
――――――――――――――――――
== 大便の味比べ ==
{{要出典範囲|朝鮮王朝では19世紀まで、他人の大便を嘗めたり食べたりして、誰が排泄した大便かをあてるゲームのようなものがあった。王宮に若い女性を５人程度呼びだし、面前にて大便を[[排泄]]させた上、上級貴族がその大便を嘗め味を確認した上、誰の排泄した大便かをあてる遊びが行われていた。当てることができたものは、その女性と性交することができ、誰も当てることができなかった女性は、屈辱を受けた上殺害されるという理不尽極まりない[[野蛮]]な風習であった。
――――――――――――――――――

…しかしソースに挙げた『誰かの妄想・はてな版』のコメ欄にはこんな投稿が。

――――――――――――――――――
『大便の様子を見て健康状態を知るというのは、医学では基本的なことであって現在でも重要視されてます。大便が苦いというのは胆汁がちゃんと出ていることの証拠であって、胆汁が出ていないようなら重病です。今では苦味の正体はビリルビンであることがわかってますから便検査でビリルビン定性を調べればよいのですが（血液検査や尿検査などで胆嚢の状態はおおよそわかります）、昔は嘗めるしか無かったでしょうね。当然ながら朝鮮のみの事情ではありません。
――――――――――――――――――

…たしかに西洋医学も大体こんな。
ジョン・ハンターの伝記にも類話があったよーな…
さらにこうもあります。

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嘗糞が娯楽だった等の話はデマでしょう。
インターネット上の「嘗糞娯楽」説は、全て「朝鮮医籍考」（1935年）を参考文献としているようですが、具体的な文章の引用もありませんし該当ページなどの重要情報もありません。「朝鮮医籍考」は素人の手に入るような本ではなく、一部の大学図書館の書庫くらいにしかありません。著者は三木栄先生で、朝鮮医学史研究では非常に高名な方ですが、1935年当時はまだ30歳そこそこのはずです（1992年にお亡くなりになられました）。三木先生の著作でよく知られているのは、「朝鮮医書誌」（1956年）「朝鮮医学史及び疾病史」（1963年）「朝鮮医事年表」（1985年）などですが、「嘗糞娯楽」説がこれらを参照していない点も不可解です。

機会があれば「朝鮮医籍考」にあたりたいと思いますが、多分デマか曲解でしょう。

嘗糞が韓国併合で日本によって禁止されたというのもあるようですが、こちらは専門ではありませんが、該当する法令などの名称が明確になっていないようですから、デマのように思えます
――――――――――――――――――

…ということなので、いつも通りネトウヨさんがろくなソースもないまま広めた風説の域を出ない代物の様ですね。
またかよ！


ともかくネトウヨさんは「糞喰い民族」とやらが一体誰に当て嵌まる言葉なのか、胸に手を当てて考えた方が良いと思います。







■川崎市、ヘイトスピーチ禁止条例可決　罰金最高５０万円
(朝日新聞デジタル - 12月12日 11:41)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5899020