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2022年05月01日16:03

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火星へ

メアリ・ロビネット・コワル

先の[宇宙(そら)へ]の続編、歴史改変から離れていく。その地球には住めなくなるので移民しなければならない。月面に恒久的な基地はできたが規模はまだ小さい。そこで火星へとなる。だが1960年代の技術なので冷凍睡眠は存在しない。往復3年をそのまま過ごす。2隻に7名づつ、他に機械船が一つで。あらかじめ工場やら燃料やらを送り届けておこうという発想にはなっていない。

予算の獲得のための不自然な人選、テロ、人種差別、女性蔑視、感情的な衝突、船内恋愛、トイレの故障、暗号を使ったプライベートな通信、大腸菌による汚染、事故、2名の死者、地球との通信途絶、宇宙細菌。冷凍睡眠が存在しないゆえに一軒家でルームシェアする住人たちのリアリティ番組を見ているようだ。いやリアリティ番組など見たことないのだけれど、女子プロレスラーの方が命を絶った番組に関するニュースを聞いていると、きっとそんななんだろうと思えてくる。コワルは朝ドラからリアリティ番組になった。それでも楽しく読めた。船にはSF本も積んである。[火星のプリンセス]に[異星の客]、そして着陸船が火星に降りると[ブラッドベリ基地]を名乗る。本書は火星年代記を範にとっているのを差し引いてもブラッドベリ基地はいい命名だよ。

気になった点。軌道ステーションから地球に戻るシャトル船の外壁が熱くなるのは大気との摩擦とされているところ。60年代の理解ではそうだったのか。ジェット戦闘機の外壁が熱を持つことは知られていたはず。熱力学における断熱圧縮が知られてないはずがない。でもそれらを結びつける発想がなかったか。宇宙船の姿勢制御や管制センターとの通信がリアルなだけに不釣り合い。

現実世界の21世紀でも冷凍睡眠技術は存在しない。なのに米国NASAは2040年までの有人火星計画を立てているそうだ。議会で予算が認められるか怪しいしロシアの参加は絶望的だし実現するとも思えないが、もし本当にやるなら冷凍睡眠なしでとなろうか。そもそも冷凍睡眠技術の確立には人体実験が必要で初期の頃には事故も起こる。普通に考えれば倫理的な障壁のため人体実験は躊躇われる。でも倫理より党の方針が上回るあの国なら人体実験もやりかねない。そうか火星移民はあの国の人たちが行くのだ。
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