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2022年04月24日14:04

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赤い惑星への航海

テリー・ビッスン

前回取り上げたコワル[宇宙(そら)へ]の続編が[火星へ]であることを知ったので、それを入手する間にひとつ火星SFを読んでおこうと選んだのがこれ。NASAも米国海軍が大手資本に買収されたような近未来世界で、B級映画プロデューサーが人類初の火星到着を映画にしようと企画する。使用するのは計画半ばで軌道上に打ち捨てられた宇宙船。乗り込むのは男女のハリウッド俳優と米ソのパイロット、映画監督兼カメラマンと医師とネコと、密航した少女。いざ火星に降り立ったものの帰還のための燃料はギリギリで、火星では先に送った燃料を探すうちに異文明の痕跡すら発見する。クラーク[前哨]オマージュ。その映画は大ヒット、アカデミー賞受賞の席では登場人物は映画2001年にも言及する。そして授賞式で上映される映画のダイジェスト、ラストシーンでは離れていく宇宙船に親指を立てて見送る老宇宙飛行士。もはやお約束。

ビッスン自身がSFファンであり、まさにSFファンが読みたいものを書いたという。登場する医師はボーンズとさえ呼ばれている。ああこういう成り立ちの作品があったな、地球周回軌道から下りざるを得なかった宇宙飛行士をSFファンダムの力で軌道に戻そうとする話。ニーブンとパーネルの共作じゃなかったか。本作の出版は90年、そこから30年以上たった今では古さは否めない。宇宙開発はアメリカとソ連の共同プロジェクトというのがSF者の夢で現実的だったのよねえ、それはもうないよねえ。通信時間遅れにも関わらず映像や音声で双方向通信するしファックスすら使う。一応ハードSFということになっているがサイエンス面はそれほど硬くない。

とはいえ面白かった。95年の文庫出版時に読んだ記憶よりも面白い。当時より火星の情報は増えたし、何よりgoogle mapで火星の地形図を見ることができる。地図をたどりながら物語を読むのは[ダロウェイ夫人]と同じく効果があった。もう一冊あるビッスン[世界の果てまで何マイル]も買っておけばよかった。
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