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2021年10月24日07:43

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細菌の逆襲

吉川昌之介

難しい版の[はたらく細胞]。最近の(95年初版だからそれほど最近でもないが)細菌について淡々と医学的事実を述べている。だが感染症拡大事例の紹介、薬剤耐性菌の蔓延など、読んでいると焦燥感と危機感を覚える。この世界は大丈夫なのか。

再読して目についたのは、細菌が多剤耐性を獲得するのはRプラスミドによる遺伝子の伝達であるとのこと。突然変異と淘汰によるものではないそうだ。また出た、ウィルス進化論。いやプラスミドによる並行遺伝は以前から知られた現象だとウィルス進化論の中でも触れられていた。首の長さが中途半端なキリンの祖先の化石が見つからないのは種全体があるとき首が長くなるウィルスに感染したからだ、という説明は興味を引いたんだけどねえ。

著者は日本細菌学会の会長を務めたことのある方。なのに本文中にはインフルエンザ[菌]との記述がある。初読時には読み流していたが、20世紀の半ばあたりでインフルエンザはウィルスがもたらすことはわかっていたはず。著者も編集者も大丈夫か。[復活の日]でもインフルエンザはウィルス性とされていなかったか。たかが風邪で、との表現はあったもののインフルエンザ[菌]とはされていなかったはず。クラークの三法則の一つめ、[高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている]を連想した。ところが調べてみるとインフルエンザ菌は実在することがわかった。インフルエンザ感染患者から北里柴三郎らが分離、培養に成功したもので、のちにいわゆるウィルス性インフルエンザとは別物であることが判り、名前だけが残ったのだそうな。先生ごめんなさい。
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