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2020年08月09日10:27

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闇の聖母

フリッツ・ライバー

初読。中学生のころ読んだ[小松左京のSFセミナー]で、代表作として[闇よつどえ]が紹介されていたため作家の名前だけは知っていた。本作は先作よりも四半世紀あとの出版。ハヤカワによる翻訳が79年、挟まっていたレシートから推して古本として入手したのが99年、そしてこの2020年まで書架で眠っていたことになる。妻を病で亡くしアル中から立ち直った恐怖小説作家が、たまたま入手した古本を契機に体験する、過去に存在した妄想家からの呪い。ストーリィを端的に略すとこうなる。オカルト?それって文字で読んで面白いのか、いや怖いのか。

わたしはオカルトについては真面目に取り合う価値はないと10代の前半には判断していた。オカルトを見下していたためオカルトとして楽しむ余裕は身に付けなかった。これまでにラヴクラフトのクトゥルフ神話を一冊だけ読んでいるが、恐怖も嫌悪も感じない、さっぱり判らなかった。文字から映像に至るわたしの想像力は枯れてしまったのだろう、ギーガーのエイリアンみたいなクトゥルフを目の前に出してもらえれば、おぞましさを感じられたかもしれない。

本作末尾の荒俣宏の解説がなければ判らないままだった。英国のSFに神学が紛れ込むのなら70年代のアメリカではそれはオカルトだった。と。リアリズムや唯物主義が確かなものとして信用できる基準でなくなったから、だそうな。そういう背景があればSFとの親和性は納得できる。

余談ながらこの表紙カバーにはやられた。見つめられると不穏な気分になる。この絵がすなわち闇の聖母ということになるのだが、見ていてロセッティを思い出した。ロセッティはラファエル前派。画風が似ている(と私が思う)本カバーは中川脩という画家の手によるものだった。他の作品を検索してみるとラファエル前派風というわけでもなく、SFの表紙カバーも手掛けているそうだ。
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