筒井康隆
父の遺品を整理していた際に見つけたもの。ブックオフの値札が貼り付けられているが、筒井など読まなかった父がどのような経緯で入手したのかはわからない。それはともかく。
普段から推理小説を読まないのでわからないのだが、密室殺人の謎解きを読者に挑むのがミステリーだとしたら、これは全く違うだろという事になる。物語の中にヒントがほとんどなく、読者は登場人物らとともに翻弄されるばかり。
フェミニズムという点もどうか。かの主張には詳しくないが、自立した女性であろうとする専業主婦が売春行為に走るというのも飛躍が大きいように見える。フェミニズム文学批評だってわかっているはずなのに、殺人の動機にフェミニズムはほぼ関係ない。
そうは言っても楽しく読めた。筒井らしいスラップスティックさは一切見られないが、二時間サスペンスドラマの脚本ならきっとこんなだろう。ただ、どうしてこういう話を書こうとしたのかその動機はわからない。緻密な設計が窺えるものの、この話は筒井でなくても書ける。
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