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2019年12月29日09:01

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草を結びて環を銜えん

ケン・リュウ

単行本「母の記憶に」を文庫化するにあたって分冊化された後編。こちらもおもしろかった。ケン・リュウの現在位置がよくわかる。前巻に比べ中国色が強い。

"万味調和-軍神関羽のアメリカでの物語"
19世紀、アメリカへ渡った中国人労働者たちの話。いかに現地化して行ったか。いかに米国社会に根を下ろして行ったかを描く。彼らが、軍神となった関羽をいかに心の拠り所としていたかも。
著者本人も両親とともに8歳の時にアメリカに移り住んでいる。著者もこんな気分なのだろうか、と思わせる。だがその中国人のコミュニティは、本土から妻を呼ぶことを許さずアメリカ人との結婚を許さない排華移民法によって第二次大戦前に消滅してしているそうだ。著者にも悲壮な決意があったろうか。だから弁護士、プログラマー、作家/翻訳家として成功をつかんだか。

さて、以下に示す作中の引用部分に引っかかった。

故郷にいれば貧乏人でも味わえる素朴で静かな楽しみを捨て、新天地の豊かな生活が与える不毛の喜びに取り替えよ。親の家を出、祖先の眠る土地を離れよ。今生きている者も死せる者も棄てて、富を求めて走れ。彼らの目にはこういったことより称賛に値するものはない。 トクヴィル「アメリカのデモクラシー」

祖先の眠る土地に住み、静かな楽しみと安穏とした暮らしを選んだわたしに、この言葉が痛い。
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