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2019年12月15日14:08

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母の記憶に

ケン・リュウ

いやあ面白い。少しも判らないトマス・ピンチョンの後だけに滲み入る。表題作は良い出来である。ここでは他の印象的な小編について感想を記す。

"重荷は常に汝とともに"
異星の失われた文明が残した文書が、実は英雄たちの叙事詩ではなく、減価償却や所得税の児童控除をはじめとする税法だった、というアイディア。確かに、税法は叙事詩よりも社会のあり方を雄弁に語る。わたしも職業訓練で会計と税法を学んだから納得できる。

"ループのなかで"
主人公が職を得たプロジェクトは、ドローンを使って攻撃する兵士の心的障害を緩和するため、引き金を引くプロセスを過去の膨大な映像から機械学習したAIに任せるソフトウェアを開発するものだった。プロジェクトは成功したが、やがて過激派たちはアルゴリズムを読み、評価点が低くなる子供に爆弾を背負わせるようになる。とうぜん誤射も起こり、映像を見た主人公は苦悩する。ソフトウェアのちょっとしたパラメータを変更しただけだったのに。きわめて現代的なカリカチュア。
かつてわたしが関わった分野とも近く、そのストレスはなんとなく理解できる。いやわたしが関わったのはあくまでシミュレーションで、その人的被害はディスプレイの中だけの話だったけれど。新人の頃は克服するのに多少の割り切りが必要だったのは事実。

"パーフェクト・マッチ"
ユビキタス・コンピューティングを提供するネット企業が、スマートスピーカーを使って常にナイスな提案をする世界。スピーカーは人が何を考えるべきかすら教えてくれる。欲望は広告主に支配される。本当の自由を求めて反乱を企ててみたら...というお話。その企業の社是は「よりよい世界を作ろう!」もうあの会社しか思いつきません。現代的なカリカチュア(2回目)。
さてわたくし。スマートスピーカーの導入予定や音声アシスタントの使用実績はないが、Mac, iPhone, iPad, apple watchを使い、それらが全てiCloudで繋がっている。こちらの会社だってそうかもしれないが、そうではないと信じたい。そのためのお布施でもあるし。
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