ケン・リュウ
著者は中国系アメリカ人。手堅いイーガンだけでなく新しい作家も読まねばならんだろう、しかし最近の作家は全くわからない。仕方なく帯の又吉直樹推薦で選んだ。
苫小牧フェリーターミナルで乗船を待ちながら読んで、表題作で少しうるっとする。ちょっとした中国の魔術と孤独、息子に伝わらなかった母の愛。わたし自身も晩年の母との関係はうまくなかった。両親が存命なら北海道旅行をプレゼントしてはどうか、フェリーと温泉宿を確保したら喜んでくれただろうか。そうだったかもしれない。
それ以外の作品では近代中国の悲しい歴史を踏まえ、政治的にはニュートラルな立場から淡々と描く。ワイドスクリーン・バロックともサイバーパンクとも異なる。繊細で叙情的で、21世紀のテクノロジーとシニカルな視点が共存している、これがアジアのSFの萌芽であろうか。スターシップと俳句のスチャリトカルがタイ系と記憶しているが、むしろ例外だろう。久しぶりに新しいものを読んだ気がする。
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