2015年 押井守
製作者には申し訳ないがYouTubeで見た。あるいはリブート作品のプロモートのためと黙認されているのかもしれない。頑張っているのだが全体的には残念な出来だった。理由は二つ。
劇場版パトレイバー2作目のテーマを深めていない。93年当時のあのアニメは先鋭的であったが実写とはいえ2015年に同じテーマを繰り返しているようにしか見えない。2001年の同時多発テロ以降、日本人自身が平和ボケを疑うことは増えたものの、当時の繰り返しでいいのか。パトレイバーが立ち向かう相手として攻撃ヘリコプターは絵として解りやすいが、セルフパロディの域を出るものではなかった。パトレイバーの限界なのかもしれない。
二つめ。制作が2011年の後であるにもかかわらず、国家的危機にリアリティを感じられない。私たちは原発事故は経験したが国内での武力テロを経験していないからだろうか。見てはいないが日経ビジネスオンラインで特集記事を読んだシン・ゴジラと比べてしまう。制作側はそもそもリアリティを狙っていない、そういう切り取り方を意図していないと考えられるが、パトレイバーの近未来物としての出自から見る側はそれを期待してしまう。
押井は何がしたいんだろう。アニメ作家として実力があって昨年は国際的な賞も受けた。フォロワーは少なくない。パトレイバーというわかりやすい看板がなくて困ることはあるまいに。実写版はコメディタッチの短編だけにとどめておけばよかったものを、返す返すに残念だ。
幸いにもパトレイバーのリブート作品には押井はタッチしていない模様。パイロット版にはアニメ(ーター)見本市の都合か庵野の名前も見えてやや皮肉だが、パトレイバー作品の後味をよくするには効果があるだろう。
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