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2021年02月11日04:02

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広い曲がり角


多分、都内の静かめな街の夜。

仕事帰り。
何だか肩の力を抜いて話し易い同僚らしき男と、私の二人。
街灯の少ない歩道を歩き、左側に幅広い車道。
やがて車道の方を向いて立ち止まる。
車道が左側から伸びて、右側背後へ曲がって行く位置。
クルマの行き交いが多く、しかし横断歩道は無い。
同僚らしき男は、「ここ、クルマ多いんだよナ」とボヤきながら、
上手いタイミングで先に向こう側の歩道へ渡る。
私も用心深くクルマの流れが止む瞬間を見定めて、
まずは中央分離帯の浮き島の上に一旦辿り着き、
それからまた、同僚らしき男の待つ、向こう岸へ走った。

冷気の中に春が混ざっている様な、
静かな空気を顔面に直に感じながら、
息吐きながら、KIRINJI弟に似た同僚らしき男と、
待ち合わせであると言う駅前に向かって歩く。
何となく彼とは、映画とか音楽の話が合いそうな雰囲気で、
言葉を交わしながら一緒に歩いていても、ラクだ。
「そういえば、〇〇さん(私)とは同期入社になるんじゃなかったっけ?」と言われた。

程なく歩道右手に、小さな駅の改札口の白い灯りが見えて来る。
同僚らしき男が言う。
「そういえば、Iさんって、〇〇さんも知り合いだったっけ?
今日はIさんも来るんだよ」

「Iさん・・・ああ、あのコか。随分と久し振りに顔を見るなァ」
と思い出した。

暗がりの中、一際白く光る小さな駅前。
改札を出て、歩道への小さな急な階段を、
2〜3名が、「やァ」という感じで降りて来た。
その中にIさんもいた。
彼女は明るいグレーのコートを着ていて、
顔が少し浅黒くなっている様に見えたが、変わらぬ特徴的な笑顔で、
「うわァ、〇〇さん、お久しぶりです〜!」と挨拶して来た。
お元気そうで、何よりだった。

皆で歩道を歩く。
小さな、感じの良いお店が見えて来た。
これから飲み会である・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・

暗闇。
ベッドの上・・・・・・・・・・・・・・・
ハッと枕元の時計を見る。
午前3時過ぎ。
「嗚呼。目が開いてしまった」

夢から現に、比較的早めに戻る。
デスクの上に置かれた、
腕時計やら折り畳まれたマスクやらを見つめながら、
明日、そしてちょっぴり憂鬱な明後日と、
予定がアタマの中で回る。

「また、眠るか。眠れるかナ・・・嗚呼、メンドくさいネ」
と、暗い部屋で独り言。

ボンヤリと、
身体が泣いている様な感じが、
少しのあいだ、した。

「同僚らしき男」に実際の記憶は無かった。
ただ、こんなタイプの同僚が昔いた様な、懐かしい感じはあった。

「Iさん」は、とても意外なキャスティングだった。
実在の人物であり、一時期の知り合いであったが、
もう長らくお会いしていない、
いや、もう死ぬ迄お会いする機会は無いかも知れない、
特徴的な笑顔が、懐かしかった。
短いが、突然の再会だった。

そして何処だが分からぬが、
夜の街の、やたらとクルマの多い、
幅広い曲がり角を走って越える感じが、
何だかたまらなく懐かしかった。

「さて・・・・・・」
暗いベッドに再び横たわる。

無音の天井が、私を眺めていた。







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