多分、都内の静かめな街の夜。
仕事帰り。
何だか肩の力を抜いて話し易い同僚らしき男と、私の二人。
街灯の少ない歩道を歩き、左側に幅広い車道。
やがて車道の方を向いて立ち止まる。
車道が左側から伸びて、右側背後へ曲がって行く位置。
クルマの行き交いが多く、しかし横断歩道は無い。
同僚らしき男は、「ここ、クルマ多いんだよナ」とボヤきながら、
上手いタイミングで先に向こう側の歩道へ渡る。
私も用心深くクルマの流れが止む瞬間を見定めて、
まずは中央分離帯の浮き島の上に一旦辿り着き、
それからまた、同僚らしき男の待つ、向こう岸へ走った。
冷気の中に春が混ざっている様な、
静かな空気を顔面に直に感じながら、
息吐きながら、KIRINJI弟に似た同僚らしき男と、
待ち合わせであると言う駅前に向かって歩く。
何となく彼とは、映画とか音楽の話が合いそうな雰囲気で、
言葉を交わしながら一緒に歩いていても、ラクだ。
「そういえば、〇〇さん(私)とは同期入社になるんじゃなかったっけ?」と言われた。
程なく歩道右手に、小さな駅の改札口の白い灯りが見えて来る。
同僚らしき男が言う。
「そういえば、Iさんって、〇〇さんも知り合いだったっけ?
今日はIさんも来るんだよ」
「Iさん・・・ああ、あのコか。随分と久し振りに顔を見るなァ」
と思い出した。
暗がりの中、一際白く光る小さな駅前。
改札を出て、歩道への小さな急な階段を、
2〜3名が、「やァ」という感じで降りて来た。
その中にIさんもいた。
彼女は明るいグレーのコートを着ていて、
顔が少し浅黒くなっている様に見えたが、変わらぬ特徴的な笑顔で、
「うわァ、〇〇さん、お久しぶりです〜!」と挨拶して来た。
お元気そうで、何よりだった。
皆で歩道を歩く。
小さな、感じの良いお店が見えて来た。
これから飲み会である・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
暗闇。
ベッドの上・・・・・・・・・・・・・・・
ハッと枕元の時計を見る。
午前3時過ぎ。
「嗚呼。目が開いてしまった」
夢から現に、比較的早めに戻る。
デスクの上に置かれた、
腕時計やら折り畳まれたマスクやらを見つめながら、
明日、そしてちょっぴり憂鬱な明後日と、
予定がアタマの中で回る。
「また、眠るか。眠れるかナ・・・嗚呼、メンドくさいネ」
と、暗い部屋で独り言。
ボンヤリと、
身体が泣いている様な感じが、
少しのあいだ、した。
「同僚らしき男」に実際の記憶は無かった。
ただ、こんなタイプの同僚が昔いた様な、懐かしい感じはあった。
「Iさん」は、とても意外なキャスティングだった。
実在の人物であり、一時期の知り合いであったが、
もう長らくお会いしていない、
いや、もう死ぬ迄お会いする機会は無いかも知れない、
特徴的な笑顔が、懐かしかった。
短いが、突然の再会だった。
そして何処だが分からぬが、
夜の街の、やたらとクルマの多い、
幅広い曲がり角を走って越える感じが、
何だかたまらなく懐かしかった。
「さて・・・・・・」
暗いベッドに再び横たわる。
無音の天井が、私を眺めていた。
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