高校時代のクラスメイト。
修学旅行では、一緒に萩を自転車で走った。
速くて、全然追いつけなかった。
ギターが好きで、学祭ではアースシェイカーやRATTを弾いていた。
私のアズテックカメラのカセットを貸したら、
「これ、クリスマスに聴く音楽?」と言われた。
そんな彼が、私に貸してくれたカセット。
佐藤博の『THIS BOY』だった。
彼の弾く音楽とは違っていたが、如何にも「彼の音楽」に聞こえたのだった。
彼には夢があり、その夜も夢の為に目的地に走っていた。
そして突然、地上からは消え去った。
彼も、佐藤博も、今はもういない。
当時は動揺を隠し、淡々とした態度で、やり過ごした。
私も、大体のクラス仲間も。
しかしそれは今も、
私の鳩尾の中の遠くに、刻まれている。
時々風は吹き、砂を払い、その刻印は現れる。
もしも・・・だったら・・・今・・・
刻印の蓄積は、
実は吐き出したいかなしみかも知れない。
自分で思っているよりも、多分。
もしも・・・だったら・・・今・・・
その今の中を、私の命は今、彷徨っている。
私の目や耳に触れるもの、
肌に吹く風、擦れ違う人々に、
意味や名前を付けるのは、
私しかいない。
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