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2020年09月18日18:44

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本格時代劇「UFO侍」

「ケルマさん、今度はUFOについて書いてみませんか?」

今朝、編集者さんに言われたので、なんとなくUFO時代劇を書いてみたケルマさんです。(  ̄▽ ̄)




時は元禄五年、打ち続く飢饉の難から民衆を救わんとする一人の侍がいた。
和泉家の三男坊、和泉真坂時三郎である。

夕暮れ時の、赤々と染まった御領谷を見上げた時、真坂時三郎の脳裏に、病床の、今は亡き母親の言葉が谺した。

「お前の名を忘れるでない。真坂時三郎とは、まさかの時の世の中に、粉骨砕身の思いで奮闘するようにと、母が名付けたのです」

真坂時三郎は、ひとり呟いた。

「然り、まことに然り。ならば、今こそ粉骨砕身となって、我が使命を全うしようぞ」

谷からの風が、時三郎の頬を撫でていった。
その刹那・・・

「おっと!ごめんよっ!」
一人の小僧が、危うく時三郎にぶつかりかけた。
その、巧みな所業を、時三郎の目は見逃さない。すかさず小僧の手をつかみ、捻りあげた。
「あ、いたたたたっ!だ、だんな、な、なにするんですかい!」

「小僧、相手を間違えたようだの。己の目を誤魔化せると思うたか?」

小僧の手には、先ほど、真坂時三郎から掠め取った巾着が握られている。

「ち、ちくしょう!おう、好きにしやがれこんにゃろめ!切るなり突き出すなり勝手にしやがれってんだ!」

よく見れば、まだ十かそこらの小僧である。その小僧が、怖いもの知らずの口調で捲し立てるのを聞いて、真坂時三郎は思わず、下瞼をほころばせて吹き出しそうになった。

「はっはっはっ!ならん!ならん!お前のような小僧を責めたところで、己の自慢にはこれっぽっちもならんわ」

よくよく、小僧を見てみると、顔は血色が悪く、捻りあげた手首は痩せて骨ばっている。

・・・無体ならんことよ。この飢饉の世だ・・
さてさて、飢えたか乾いたか?・・・

時三郎は、元来優しい性分だったので、小僧にこう言ったのである。

「しばし、己に付き合え。なあに、取って食ったりなどせん。逆に、お前に団子を食わしてやるぞ」

小僧は一瞬、思いもよらない展開にポカンとなったが、ここはひとまず、言う通りにしたほうが身のためと心得た。
これも、浮き世の流れかな。


しばしの後、茶屋で団子を頬張りながら、小僧は考えていた。

・・このお侍、いったい何者なんだい。見たところ悪い人じゃあねえみたいだが、きっと、おいらに何かしろと無体なことを言ってくるに違いねえ・・・・

「己を怪しいやつと思うているな。己は和泉真坂時三郎。お前、名はなんという?」

考えていたことをそのまま見抜かれ、こいつは天狗かなんかかい?と、面食らった小僧。思わず本当の名前をしゃべってしまった。

「米太郎・・・」

「そうか、米太郎。お前、今のこの世をどう思う?」

しばらく、沈黙したあと、米太郎は低い
小さな声をだした。

「・・・・もし、御政道が正しいんなら、おいらの父ちゃん母ちゃんは、死んじゃいねぇ・・・」

それは、言ってはならない言葉であった。ましてや、侍の真坂時三郎の前でなど。
お上に楯突く言葉が、幼い米太郎の口から出るとは、真坂時三郎も心中の外ではあった。しかし、彼はこう言ったのである。

「そうだな。御政道が間違っているのかもしれん」

米太郎は、呆気にとられた。こりゃ驚いた!このお侍、気はたしかかと。

「なあ、米坊よ。己はこう思うのだ。この世には、なにかカラクリがあると。己たちの預かり知らぬ何かだ」

ごう!と大気が揺れた。
あたりの気配が夕暮れと相まって、闇が深まりつつある。風が冷たくなり、まさしく逢魔が時である。そして、空には丸い光り物があった。

「あっ!あっ!だんな!ありゃ天狗ですぜ!」

「天狗?天狗だとっ!あれが?」

光り物は、二人の頭の上を音もなく飛び、過ぎ去っていった。

しばしの沈黙のあと、真坂時三郎は、顔を空に向けたまま呟いた。

「米坊よ。この世には、我々が預かり知らぬ秘密が隠されているのだ」

「だんな、おいらもそう思いやすぜ!」

時に、元禄五年、ある初秋の夕暮れ時の出来事であった。


続くのか?これ・・・(  ̄▽ ̄:)
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