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2019年12月10日22:54

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ナーンと羊肉のシャシリク

ほぼ48時間の滞在なので食文化の体験はきわめて貧弱ですが、開陳できるだけご覧に入れようと思います。
いつものことながら、写真はお粗末そのものです。

着いたその日が試合で、翌日は朝早くから遺跡観光をするとあって、試合の後は、近くのスーパーで明日の朝食と今夜の軽食と飲み物を買うことにした。
(お昼ご飯の代わりに、試合の前に茹でトウモロコシを、スタジアムで2種類のサンドウィッチを食べていたので、あともうちょっと何か、という気分だった。)
昨年のW杯での経験で、ロシアのスーパーの惣菜コーナーが極めて充実していること、食べ物はどれを選んでも大抵美味しいことはわかっていたが、果たして旧ソ連の一員、キルギスでも事情は同じだった。
夜10時まで営業しているスーパー「フルンゼ」に行くと、まずは店の奥の壁沿いにあるに違いない総菜コーナーをまっすぐに目指す。
ほら、やっぱりあるよ。
数十種類の総菜、色とりどりのサラダ類や、ボリウムのありそうなグラタン、ハムや肉料理、サーモンや白身魚のソテー、そして数種類の炊き込みご飯やドリアに煮込み野菜。
ガラスケースに並んだそれらを、お姉さんに「それとそれ、それからこれも」と指さすだけで、彼女たちはちゃっちゃと容器に入れ、計り、値札を貼って渡し、客はそれをカートに入れてレジに持って行って会計するだけだ。
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ナーン、ニラを巻き込んだクレープ状のもの、ジャガイモと羊肉、青菜のソテー、シャシリク、ほの甘いプリヌイ(クレープ)。
これにチーズとビール、翌朝用に、濃厚なヨーグルトドリンク。

ついでにその次の朝食も。
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ほうれん草とアルファルファを軽くソテーしたもの、パリパリキャベツとニンジンのサラダ、ポテトの巣ごもり風。
どれも日本のスーパーで一年を通して買える素材で作られているし、味付けもごくシンプルなので、誰にでもおいしく食べられるものだと思う。
フォト オシュバザールにて。

日本のスーパーと同じように、工場で作られた食パンや甘いパンの棚もあるのだが、それとは別に、総菜コーナーの一番端にナーン売り場も据えられていた。
どうやら、ナーンは店の奥の窯で焼いているらしい。

最初に買ってみたのは夜8時、いつ焼いたのかわからないナーンが並んでいて、スーパーのナンなんて「普通」以外の何物でもないと知りつつ、他の工場生産パンよりはいいか、と一つ購入した。(勝手に取って、そこにあるビニール袋に入れてレジに持っていくだけ。)
ところが。
部屋に戻っていざ食べてみると、な、なんて美味しいの!!
クルグズのナーンの特徴は、中央部分をわざとペタンコに潰して、そこに押し型のようなもので点々と模様をつけてあるところだ。
きっとこの模様で、共同の窯で焼いても誰のパンなのかがわかるのだろうな。
平たい部分はクリスピー、膨らんだ部分は空気が少し入っていながらフランスパンのような弾力が感じられ、何より小麦の香りがとてもいい。
ぜんぜん焼き立てじゃないのに、この水準は素晴らしい!

『キルギス便り』の渡辺健二氏が著書で熱弁をふるっている通り、キルギスの人たちにとって、パン(ナーン)はパン以上のもの、つまり日本人のコメのように大切なものであるらしい。
そういえば、サッカー日本代表がかの地に到着すると、練習場を提供したクラブのオーナーが、森保代表監督にパンと塩をふるまった、という記事があった。
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2019/11/12/gazo/20191112s00002014068000p.html
(森保監督のお作法の、品のいいこと!)
渡辺氏によると、キルギス人からパンをふるまわれたら、たとえ満腹であっても一口は食べなくてはならない、それは歓迎のしるしだから、ということだった。

翌々日。
キルギスを発つ前に、お土産にペットボトルのビールを買って帰ろうと午後2時頃に食品売り場に行ったところ、相棒が急に私の袖を捕まえて、パンコーナーを指さした。
見ると、パン係のお兄さんが、今まさに焼きあがったナーンを売り台に並べ始めているではないか!
焼き立てだよ!買うべしっ!
まだ少し湯気の上がるそれを慌ててつかんで、部屋に帰ってチェックアウト時刻を気にしながら、同時に買ったブドウと一緒にちぎりつつ齧る。
美味いっ!
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さっきバザールでラグメンを食べたばかりで、お腹は空いていないはずなのに。
バザールの露店でも壮観なくらいたくさんのナーンを売っていたのだが、なぜかその時は買わなかったのだ。
それはきっと、朝焼いたパンを昼にバザールで買うより、スーパーへ行って焼いたばかりのパンを食べてから帰りなさい日本人よ、という神の思し召しかもしれぬ。
アルハンドゥリッラー。

遺跡巡りを終えて、現地ガイドのタクと立ち寄ったリゾートホテルのレストランでも、当然ながらナーンが出てきた。
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ここのはレストランだからか、胡麻が振ってあってちょっとリッチな仕様。
しかしスーパーで最初に買った冷めたパンの方が美味しかった。
タクに、どうして真ん中が凹んでいるのか聞いてみたが、その方が焼く時に窯に入れやすいからかもしれませんね、と言う。

このレストランでは今夜披露宴があるらしく、部屋は飾り付けの真っ最中だった。
我々は、ちょっとごめんなさいよ〜という感じで、同じ部屋の隅の四角いテーブルでランチをとったというわけだ。
白を基調としたブーケと、いくつもの丸テーブルのセッティング、キラキラ輝く食器やグラス、白いグランドピアノにはドレープをたくさんとったシルクサテンの布飾り、そして豪華なキャンドル。(天井にはミラーボール。)
日本でも、クルグズでも、今日びの結婚セレモニーというのはどこも同じような感じになるのだな。
相棒が、この準備の感じでどんなカップルなのか想像がつきますかと問うと、タクは少し考えて、多分地元のキルギス人でしょうねと言った。
万事西洋風だが、ロシア系のカップルだとしたら、親戚の数は少ないから、こんなに多くのテーブルは必要ないはずです。
ロシア人なら、10人とか20人とか、そのくらいしか集まれませんから。
彼のこの観察で、ソ連崩壊後のここ中央アジアの首都における、ロシア系住民の立場の想像がつく気がした。

ここで食べたラグメンとプローフは、まぁまぁの味だった。
タクは、僕はラグメンは口に合わないのでと言って、マンティという羊の揚げ肉まんをとり、3人で分けて食べた。
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ラグメンは好きじゃないの?と聞くと、いえ、そんなことはないんですが、子供のころ食べすぎたので、近ごろはあまり食べないんですと答える。
嫌いなのか、ここのは美味しくないと思っているのか、毎回ここで食事になるので飽き飽きしてるのか、本当のところはわからないけれど、「口に合わない」という上品な日本語を最近聞かなくなったなぁと、妙なところに感心した。
「タクさんは、もう一生分のラグメンを食べ終えちゃったんですね」と返しておいたが、もしかすると彼は、次回からこの表現も使うかもしれない。

ビシュケクで一番おいしかったものを上げるなら、圧倒的に、タレに漬け込んだ肉の串焼き、シャシリクだった。
街中にはшашлык(シャシリク)の看板がとても多い。(クルグズ語はロシア語と同じキリル文字を使っている。)
シャシリクを売りとしたレストランに、夜10時を過ぎてフラリと入ったが、ここで出てきたシャシリクは絶品。
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あろうことに、骨付きマトンが、中でも一番美味しかったのですよ。(ラムじゃなくてマトンですよ!)
羊肉の嫌いな私だが、昨年タタールスタンの首都カザンでもそうしたように、ここクルグズにいる間はヒツジに体当たりしようと決めていた。
どの料理からも、味も匂いも羊が直球で飛んできたが、食べられないということは全くなかった。
そして栄えあるナンバーワンを獲得したのが、ヒツジ料理の本丸ともいうべき、シャシリクであったとは。
もしかしてわたくしは、ここにきてヒツジを克服征服したのであろうか??


そんな満足感を得て帰国した我々だが、かの地で手に入れてきたお土産類を自宅でいそいそと撮影していたら、
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キルギス名産のフエルトの匂いを嗅ぎつけて、さっそく誰かが介入してきた。
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こらっ。食べちゃダメですよ。
そういえば、バザールでは、ペットフードもこんな感じに売られていたのでした。
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フォト ビシュケクで唯一出会ったネコ

おしまい。




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