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2019年07月19日23:14

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『三国志』はつづく

今さら三国志と言われても、もはやさほどの興味は湧いてこないのだが、中国関係の展覧会はたいてい質量でグングン押してきて、力は正義だ!じゃないけれど、「美在中華」的な力づくさ加減がわたくしの性に合うらしく、たいてい愉しく観てしまう。
それに、国立博物館の年間パスにくっついてきた招待券があと1枚残っているので、紳紳と竜竜(シンシンとロンロン、昭和の人はわかりますね?)の思い出も懐かしく、上野に向かった。


日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」。
https://sangokushi2019.exhibit.jp/

展示の趣旨は簡単だ。
「リアル三国志」と銘打ち、三国時代の文物出土品をならべ、曹操の墓がどういうものであったかを再現する。
その一方で、『三国志演義』という大衆作品に育っていった、かの英雄たちの肖像やエピソードが、中国各地の壁画や故事人物図にはどんな具合に描かれたか、さらに川本喜八郎の人形、横山光輝の原画、ゲーム『真・三國無双』の美々しい武将ビジュアルまでを並べ、現代日本における「三国志」の物語の受容のようすを見せる。

諸葛亮が天下三分の計をめぐらしたあの時代は、今より平均気温が1度低かったのだそうだ。
よって作物の生育は極端に悪く、人口も少なく、かつ戦乱が続いて、かなり厳しい環境だったらしい。
そんな時代だから、芳醇な文化が育まれたとは言いがたく、よって展示品も、有力者の副葬品のわりには、出土した俑や鏡、印、穀倉楼土器など極めて地味なものが多い。
武器の類はさぞかし凶暴そうでおぞましいものがズラズラ並んでいるのではないかと期待したが、こちらも弩や矛、戟など種々あったものの、想像していたほどの物量ではなかった。
すべての展示物が写真撮影OK、ということは、ありていに言ってそう大したものがあるわけではないのだが、出品目録を読むと、国宝級(一級文物)もかなり来ており、そうそうナメたものでもないのかもしれない。

しかし驚いたのは、曹操の墓だ。
発掘された河南省の曹操高陵を一部実寸で復元しているのだが、なんということでしょう!なんにもないじゃありませんか!
「なんにも」は言い過ぎかもしれないが、実際曹操は、自らの埋葬に関して、華美にするな、副葬品を入れるなと固く言い遺していたらしい。
でもね、あなたのような時代の巨人について、後世の我々が楽しみにすることといえば、その豪華なお道具類を拝見することなのですよ。
相当に盗掘はされているのだろうけれど、にしてもね・・・。
この質素さには本当に驚かされたが、それ以上に、掘り当てた考古学者の落胆は、アイヤー!想像するに余りある。

結局、この展示で最も眼福であったものは、NHK『人形劇三国志』の川本喜八郎の人形たちだった。
かくも美麗な状態で保存されていたことに驚嘆するほかない。
見よ、今にも森本レオの声が聴こえてきそうではないか!
フォト

そして、東博の特別展としては異例なほど、観客の年齢層が低かった。
大勢の小学生や中学生が、時折生意気な蘊蓄をたれながら、お父さんやお母さんと一緒に展示を観て廻っている。
科学博物館で恐竜展もやっているのに、キミたちはこちらに来たんだね。
我々の世代が吉川英治や人形劇や北方謙三や金城武で親しんだ三国志を、彼らはゲームで知ったのだろう。
うむ、それでよし。
日本人も中国人も、みんな三国志が大好きなのだ。
(そういえば中国人のお客さんも多かった。)


最後に、わたくしの大好きな、三国志のテーマ。
オクターブ高過ぎで、鼻歌を歌うのにも往生しますが、全曲諳んじております。


そういえば、このオープニングも最高でした。




特別展「三国志」は、東京国立博物館で9月16日まで。
その後、年明けまで九州国立博物館に巡回します。
展示品についていろいろと腐しましたが、三国志が好きな人はたっぷり楽しめます。


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