「一番最初に好きになったお相撲さんは麒麟児」「相撲はあまり詳しくないけど麒麟児は好きだった」こんな言葉をいままで何度となく聞いてきたような。回転のいい突き押しで上位陣にも真っ向勝負、常に全力投球で礼儀正しく真摯な土俵態度、すべてが素人目にもわかりやすく、まさに大衆受けする昭和の人気力士だった。
芸術文化の分野においては、こういう明快で大衆になじみやすい存在をポップという(ここで話を日本のバンド“KIRINJI”に持っていく意図はない)。力士を形容するにはふさわしくない言葉だけど、元来の意味は弾けるとか飛び出るとか。彼の回転のいい突っ張りはまさにポップ、この言葉がふさわしい力士こそ彼ではないかと思った。
ずいぶん前の春場所でのこと。府立体育館の切符売場担当の彼(当時北陣親方)に、ウチの母親がチケットに関してけっこうややこしい質問をした。ところが彼は終始にこやかな顔つき、明瞭な発声にてこのうえなく丁寧に対応した。角界好きにはわかると思うけど、無愛想で知られるあの窓口でのこの応対はかなりのレアケースと言っていい。
解説者としての彼に記憶のあるかたは、このときの応対ぶりにまったく異存はないはず。そう、相撲っぷりだけでなく、すべてにおいて親しみのある愛すべき存在、大相撲人気の下支えという意味では貢献度大だったと思う。それにしても67歳とは若すぎる、天国の角界にまたまた好取組が増えてしまった。謹んでお悔やみ申し上げます。
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