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2020年10月23日15:20

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「朝が来る」〜ふたりの母親

河瀬直美監督最新作。不妊に悩む夫婦(井浦新・永作博美)は、特別養子縁組の制度を活用して男の子を家族に迎え入れる。やがて彼は成長して幼稚園児に、満ち足りた幸せな日々が続くなか、実の母親を名乗る女性から「子どもを返してほしい、ムリならお金をくれ」という電話が突然かかってくる…。原作は辻村深月の小説。

実の母親がすがたを現したあたりまでは、彼女と夫婦がからむサスペンス風の展開を期待してしまう。まるで演技力が試されているかのように、何度となくアップになる永作博美のベビーフェイス、その喜怒哀楽ぶりが味わいどころのひとつかなと思っているうち状況は一変、物語は実の母親の過去をなぞっていく。

そこからは急に彼女を軸とした社会派ドキュメンタリー風のタッチへと方向転換、予告編のみでこの作品を知ったものはちょっと面食らうことに。脅迫を受けて切迫した状況にある夫婦、そして不本意にも子どもを身ごもった若い女性、どうやってこのふたつを結びつけるのだろうといぶかるうち、そこには見事な着地が待っていた。

河瀬作品のアイコンというべき自然描写、樹々と光と風は今回もしっかりと美しく。そう、叙情的な映像表現におぼれすぎて、観る側を選んでしまいがちな河瀬アーカイブのなかでは、口あたりのいい部類に入るはず。今回もまた上質の芸術作品にふれた時のような、ずっしりとした重さがいつまでも残る秀作となりました。
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