ニューシングルの「カムパネルラ」でスタートするものの、ざっくり言って前半部分に既発シングルや他者に提供したおなじみの曲、後半にはこのアルバムで初めて披露される曲が並んでいる。これをいままでの彼とこれからの彼などと勝手に決めつけてしまうのは、A面/B面に慣れすぎたLP世代のイージーな発想か。
おなじみの曲もいくつかは新たなアレンジ。大和言葉をちりばめた「Flamingo」のミドルパートは“相撲甚句感”がより増しているし、Foorinのイメージがやたらと強すぎて、このバージョンの「パプリカ」になじむまでには時間がかかるだろうなと思ったり。そして「Lemon」の歌い出しには、何度聴いてもゾクゾクしてしまう。
LP世代の開き直りととられてもかまわないけど、せっかくのフルアルバム、もうちょっとアソビ曲があってもと思うけど、そこはタイアップに縛られたイマドキの流行歌手、ヒリヒリするような全力投球が続く。しいて言えばアコーディオンらしき音色が聞こえ、女性のため息がかすかに響く「Decollete」はちょっと脱力気味かなと。
なんでもCD初回出荷だけで100万枚を記録したというから、まちがいなく縮みゆく音楽ソフト業界の救世主。おそらく何年かのちには、ご本人の意思とはまったく関係なく、コロナに苦しめられていた日本人に寄り添った傑作などと評されるに違いない。いつになるのかわからないけど、こんどはぜひともライブに接してみたいと思っています。
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