大阪郊外のとある町を舞台にした高校生群像。小説家であり映画監督でもあるふくだももこが、自身の短編小説2作を合わせて一篇の作品に。主演の縁(えん/ゆかり=松本穂香〜今秋公開、角川春樹監督「みをつくし料理帖」主演)はじめ6人の男子・女子がみな個性的、のちのち「キミセカ」組とくくられそうな若手俳優としてのこれからが楽しみ。
つかみに登場するある事件がしばらくのあいだ伏線のまま放置、彼ら高校生のふるまいとどこでどうリンクするのか、観る側の想像はふくらんでいく。西日の射す放課後の校舎裏、線路ぞいの給水タンク、誰もいない駐車場…青春ものには既視感あふれるシーンが続くも、令和の高校生のみずみずしさはそれらをはるかにしのいでいる。
茨木出身のふくだ監督、個人的な思い出ある阪急京都線あるいは京阪沿線がロケ地なのかと勝手に推測していたら、どうやらそれは大阪にあらず。ショッピングモールが物語のキーアイテム、“すべてがモールで完結する人生”という平成時代によく揶揄されたフレーズがこの物語でも意味を持つ。ジモティーという言葉を思い出したり。
高校生たちのリアルな大阪弁がいいとの評判、ただ大阪人からすればちょっと取ってつけたような印象も。よくある”関東人の前では必要以上に濃いキャラとなる関西人”を味わう感じ。そしてブルーハーツ楽曲もまたキーアイテム。考えればふくだ監督が生まれる少しまえ、30年以上も前に創られた響き。この生命力にはあらためて敬服した次第です。
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