高校生ルース・エドガーは模範的優等生。アフリカ生まれの17歳は、困難な生活を乗り越えアメリカの地方都市で白人の義父母とともに生き生きとした日々を過ごしている。ところがある日、ささいなことから同じアフリカ系の女性教師ウイルソンと対立、彼女はルースが危険思想にハマっているとわざわざ母親に告げるのだった。
テンポ良く進んでいた物語も中盤あたりから展開が鈍化。この作品は社会派ドラマなのか、それとも最後には泣かせるファミリーものか、はたまた謎解きミステリーかひょっとしてサイコホラーか、そしていったい誰に感情移入すればいいのか、気持ちをあちこちにさまよわせながら、観る側は持久戦につきあっていく。
迫力ある顔圧、もっとも異彩を放っていたのがウイルソン役のオクタヴィア・スペンサー(「ヘルプ」でブレイク、「ドリーム」でNASA職員のひとり、「シェイプ・オブ・ウォーター」はイライザの同僚)。ルースと同じアフリカ系ながら、彼女自身の家族の問題もふくめ、アメリカという箱(と彼女は表現)のなかでもがきイラ立つ女性を好演。
いまこのタイミングで観るとどうしてもマイノリティ差別、アメリカの黒人暴動騒ぎを重ねてしまうけど、登場人物それぞれの立場からいろいろな見方のできる重層的な作り(これもまた「羅生門アプローチ」なのかな?)が実にうまくできていて、後味の苦みさえ気にしないのであれば、ぜひおすすめしたく思うコクのある作品でした。
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