この長い邦題がすべてを物語っているような。南米の小国、ウルグアイ第40代大統領の人生を、本人へのインタビューと貴重なアーカイブ映像、多方面にわたる現地撮影によって構成したドキュメンタリー作品。監督はユーゴスラビア出身、「アンダーグラウンド」「オン・ザ・ミルキー・ロード」のエミール・クストリッツァ。
“世界でいちばん貧しい”という表現は、ムヒカが収入の9割を貧しい人たちのために寄付しているという事実から。政治家が庶民派ぶってみせるのは古今東西とりわけ日本では顕著なふるまいだけど、彼は質素な生活に徹していて、トラクターで自らの畑を耕し、ポンコツのワーゲンを専用車にして運転する様子が何度となく映し出される。
聞き手として登場するのがクストリッツァ監督。彼の作品の特徴である”視覚的群像劇”、つまり画面いっぱいに広がる雑然とした風景は、ウルグアイ国民の持つパワーを表現するにはもってこいかと。そして彼の作品ではおなじみ、さまざまな大小動物も画面のあちこちに。もっとも人より牛のほうが多いのがウルグアイという国なんだけど。
けっして歯切れがいいとは言えないムヒカ大統領の語り口。自らの貧しい生い立ちや過酷すぎる拘留体験、あるいはパートナーとの恋愛譚も、すべて同じ地平にて訥々と語っていく。ときおり放たれるのは世界に向けての警告や彼自身の人生訓。それらいくつかの金言をしっかりとらえ噛みしめていくのがこの作品の味わいかただと思います。
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