「人間の時間」〜欲望の暴走ここに極まれリ

韓国の狂才、キム・ギドク最新作。またまたとんでもない映画だった。軍艦を転用した古びたクルーズ船に、日本の新婚カップル（オダギリジョー・藤井美菜）、国会議員父子（息子にチャン・グンソク）、謎の老人（アン・ソンギ）、チンピラ一味や娼婦たちなど、様々なひとたちが乗り合う。やがて彼らは自らの欲望をむきだしにして…。

どこかシロウトっぽいカメラアングルやセリフのやりとりが続く導入部、これぞおなじみギドク・マジック。食欲と性欲そして暴力〜人間が持つ根源的な欲望のぶつかり合いが続くなか、ある時点から途方もない超常現象がこのボロ船全体を覆う。ここから先は何でもあり、リアリティ無縁のファンタジー的世界だと観る側はムリヤリ納得させられる。

実際にその先は、むごたらしいとかエグいとか、ひとことでは表現できない世界が待っている。閉ざされた空間、極限状態での悲劇的なサバイバルゲームという言葉すらどこかイージーだ。もちろん万人におすすめできるわけはなく、いちおうR18+と制限はあるけど、チャン・グンソク推し韓流好きマダムなどけっこう途中退席してしまうのでは。

ギドク作品に出られただけで幸せ…みたいな印象のオダギリジョーにくらべて、堂々の主役・藤井美菜はキャリア最高の熱演では。現在は日韓双方で活動している彼女ってかっては夏の甲子園イメージガールそして映画「シムソンズ」のひとりだったっけ。本当にお疲れさまでした。もう二度とギドク作品には出たくないなんてこと言うかもしれないな。