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2020年01月18日16:15

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「冬時間のパリ」〜黄昏どきの出版業界

パリを舞台に編集者・作家・女優たちがくりひろげる会話劇。フランス映画のヒロインは私だけとばかり、またまたここでの女優役はジュリエット・ビノシュ。後半でそれを揶揄するような楽屋落ちめいたものがあったけど、果たして…。監督は「アクトレス 女たちの舞台」(これまたジュリエット・ビノシュ)「パーソナル・ショッパー」のオリビエ・アサイヤス。

よく“会話ばかりが続く平板な…”という表現があるけど、単調かどうかはともかく、今回はその会話の中味が、ほとんどIT化つまり電子書籍化に追いやられている現在のフランス出版業界、そしてすべてが短絡的で無責任なSNS社会を憂う言葉ばかり。監督はじめ製作側はよっぽどその状況を言いたかったのではないかと。まあこれは日本もフランスもほとんど同じだけど。

そして口ではエラそうに知的な言葉を交差させている連中が、陰ではドロドロの不倫劇をくりひろげているところがいかにもフランス映画。なので原題の“Double vies“には夫婦2組を中心とした愛憎劇という意味に加え、ヨソ行きの建前と内輪のホンネがいやでも交差してしまう人間の性、デジタルでは割り切れないこの世の中、みたいなものも匂わせているはず。

いかにも気の弱そうな作家が、書店でのトークイベントやラジオ出演、つまり公の場に出るとことごとく自身の作品をケナされる場面が一番面白く味わえたけど、ラストシーンまで付き合うとそれは一種の伏線だったのかなとしみじみ。ひとの書物にあれこれ口をはさむ女優役のジュリエット・ビノシュ、どうしても昨年の是枝裕和「真実」を思い出してしまいました。

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