「パラサイト 半地下の家族」〜超格差、ここに出会う

アジア人監督による、格差社会を背景とした貧困家庭のサバイバル模様をテーマにした作品が、カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを獲得する〜ここまでなら昨年の是枝裕和監督「万引き家族」とまったく同じ。ところがこのポン・ジュノ監督最新作は、くわえて来年発表となるアカデミー賞やゴールデングローブ賞のしかるべき部門にもノミネートされている。

おそらくそれはエンターテイメントとしてもクオリティの高い作品であると評価されたということ。ソウル市内、天井近くの窓から地べたの光景が広がる、ジメッとした薄暗い半地下の住居に暮らす4人家族。彼らは家庭教師・運転手・家政婦…それぞれ身分を偽り、巧みな方法で元からいた使用人を次々と追い出し、IT企業勝ち組CEOの大邸宅に忍びこんでいく。

やがてCEO家族全員がキャンプに出かけ、乗っ取りつまりパラサイトに成功した半地下の家族は祝杯をあげるが、その邸宅にはさらなる秘密が隠されていて、豪雨の夜に彼らの運命は一転…。韓国を代表する俳優、主演ソン・ガンホは悲哀に満ちた一家の主を熱演。話のカギを握る元家政婦を昨年の鄭義信監督「焼肉ドラゴン」オモニ役イ・ジョンウンが好演していた。

「万引き家族」と違って全体的にコミカルなタッチ、ごくごくシンプルな設定ながら、終始スリルとサスペンスにあふれ緊張感がいつまでも持続。スクリーンから終始伝わるジトッとした妖気みたいなものも、どこかホラー映画を思わせて薄気味悪く、韓国映画お得意の暴力〜流血もしっかり用意、これは2020年いきなりのカウンターパンチと言っていい傑作だと思います。