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2019年12月06日16:00

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「夕陽のあと」〜生みの母、母の海

舞台は鹿児島県長島町、しばらくはこの豊かな自然に恵まれた町とそこに住まう人々の様子を映し出し、スクリーンの色合いも相まってなにやら「新日本紀行」を見るような場面が続く。ところが漁港沿いの食堂でマメに働き、ただひとり標準語で話す茜(貫地谷しほり)だけは憂いに満ちた表情をたびたび浮かべ、観る側は彼女の過去に思いを巡らせることになる。

そしてある時点ですべてが明らかになり、物語は急に加速度と広がりを増して、その後はラストまでぐいぐいと引きつけられていく。生みの親と育ての親の対立という古典的なテーマでありながら、不妊治療や養子縁組、DVや幼児置き去りなど現代的な要素も盛りこみ、これは都会も地方も関係なく誰にでもすぐそばにある話だと、いくつもの問題提起が待っている。

物語のど真ん中にいる男の子、豊和(とわ=地元のオーディションで選んだ小学4年生・松原豊和君)のふるまいひとつひとつが愛くるしく、ときおり涙を誘う。笑顔のなかに翳りのある女性を演じさせたら貫地谷しほりの右に出る者はなく、それにも増して熱演だったのが対立する女性を演じた山田真歩。いままでチョイ役が多かった彼女の出世作となるかどうか。

嶋田うれ葉によるオリジナル脚本、監督は越川道夫。多様化する家族、母と子のありかたに一石を投じた、ことしの邦画を代表する一本に値すると断言していいと思う。そして先日急逝した木内みどりが優しいおばあさん役で出演。そう、これからはいままでとは違ったこういういい味を出していけるのになと残念な思い。あらためて彼女の冥福を祈りたいと思います。
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