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2018年11月16日16:00

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「鈴木家の嘘」〜方便のゆくえ

ひきこもりの長男・浩一(加瀬亮)の死に出くわした母親(原日出子)はショックで記憶をなくし、そのまま昏睡状態に。やがて目を覚ました彼女に浩一の死を告げられない家族は、彼はすっかり元気になっていまアルゼンチンで働いていると嘘をつく…。最近の話題作いくつかで助監督を務めてきた野尻克己の初監督作品。オリジナルの脚本も彼自身の手によるもの。

長い眠りから覚めた母親に家族が嘘をつくという設定は、私自身のオールタイム・ベストテンの一本、2004年のドイツ映画「グッバイ、レーニン!」を思い出す。東西ドイツは統一していないというスケールの大きな嘘にはかなわないと思うけど、こちらだって家族の生死を嘘で固めてしまうのだから重たさという意味ではベルリンの壁どころではないはず。

前半はアルゼンチンという日本とは地理的にもメンタリティー的にも真逆にある対象を置いて、どうやって嘘を貫き通すのか、そしていつバレるのかという興味で観る側をコミカルに引っ張っていく。やがて長男を死に追いやったという自責の念が家族それぞれに芽生え、いくつかの秘密も明らかになりつつ交差していく後半はグッとシリアスな空気に満ちてくる。

長女・富美役の木竜麻生(「菊とギロチン」ヒロイン)の好演もあって、全体的には静的でリリカルなタッチが折り重なり好感が持てるのだけど、なぜか物語の節目にくると、そこまでやるかという過剰な演出に転じるのがちょっと残念だった。嘘がどのようにしてバレるのか、この点に関して言えば、こちらの予想とはまったく違ったことだけお伝えしておきます。

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