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2018年05月26日14:30

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「ファントム・スレッド」〜存在のはかりしれない重さ

主人公レイノルズを演じたダニエル・デイ=ルイスが、今作をもって俳優業から引退すると宣言、オスカー主演男優賞ノミネートも重なって話題となっている一作。孤高の存在を演じるや現代随一の男優、月並みな感想ながらこれで幕引きだとは実にもったいない話。男61歳にして放つその色気は、今作でも失礼ながら共演の女優陣のそれをはるかに上回っていたような。

1950年代のロンドン、秀でたデザイナーとしてオートクチュール界で活躍するレイノルズは、ある日旅先でウエイトレスとして働く若い女性アルマと出会う。自身のアトリエのスタッフとして彼女を採用するもやがてふたりの距離は…。いわゆるシンプルなシンデレラ&年の差ラブ・ストーリーと思わせつつ、そこにはさまざまな心理的からみあいが重なっていく。

ほとんどがアトリエ内でのさほど起伏のない物語、観る側は多少の想像力を駆使しながら、ふたりの心理状態を淡々と追って行くことになる。しかし息づかいまで感じそうになるほど対象に接近し、ささいな表情の変化を映しだすカメラワーク、ちょっとしたセリフのワンフレーズ、さらに美しくも心地よい音楽などに作品全体が彩られ、退屈することはまったくない。

レイノルズの指先が、肌着一枚になった女性の身体に触れるか触れないかの距離まで接近して採寸を繰り返し、カメラはそれをねっとりと追っていく…この官能美こそが最大の見どころかも。カジュアルなアメリカ文化に侵食される直前の、伝統と品位を保ち続ける英国文化も美しい。繰り返すけどダニエル・デイ=ルイス、これで最後とは実にもったいない話ですね。
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