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2017年06月24日17:30

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「ありがとう、トニ・エルドマン」〜ゲルマン父娘魂

娘を思いやる気持ちをいびつな形でしか伝えることができず、かえって厄介な存在となってしまう不器用な父親。どこまでもぎくしゃくするふたりの距離はやがて…。古今東西けっこう見てきた感のある父と娘の人情ドラマ。ただ今回父親が邪魔するのは娘の恋路や友情にあらず、彼女がバリバリ働く国際的ビジネスの最前線というところが面白い。

ドイツ作品、かの国特有の抑制されたメンタリティーなのか物語前半はわりと淡々としていて、おせっかいな父親の神出鬼没ぶりよりも、むしろ経営コンサルタント業界でバリバリ働く娘のキャリアウーマンぷり(舞台がルーマニア・ブカレストということもあってか独語と英語の使い分けとか)、さらに職場や業界をとりまく人間関係などに興味を覚えてしまった。

ところが父親の介入がだんだんと非常識なものになり、父娘の対立模様が過激になってくるあたりからスクリーンにぐっと引きよせられる。父親のピアノ伴奏で娘がスタンダードと言っていいある曲を高らかに歌うシーンはこの作品屈指の名場面、いままでこの曲をその歌詞もふくめてこんなにじっくり味わったことがなかったなあとしみじみしてしまった。

162分という長尺もあっというま、いかにもドイツ的といえるほのかなユーモアがそこかしこに垣間見えるいっぽう、物語終盤のあけすけのなさもまたあの国かなと。この噛みあわない父娘の物語は、ジャック・ニコルソン主演でハリウッド・リメイクが決定したらしいけど、あんまりハリウッド的おバカ映画にはしてほしくないなあという気持ちが募った味わい深い一本でした。







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