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2017年06月08日16:20

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「フェンス」〜乗りこえるべきもの

デンゼル・ワシントン監督・主演、ことしのアカデミー作品賞にもノミネートされた作品が劇場公開をすっとばしていきなりDVDリリースとは!こんなことおそらく前例にないだろうし、それなりの事情があるのだろうけど、1950年代黒人家族の苦くも味わい深いドラマに浸ったあとは、やはりこれはスクリーンで受け取るべき138分ではなかったかと意を強くした次第。

もともとはブロードウェイで高評価を得た戯曲。なのでほとんどの場面がトロイとローズ(デンゼル・ワシントンとヴィオラ・デイヴィス)が住む、ピッツバーグ郊外の家屋とその周辺での会話劇に終始する。家族それぞれがたどってきた日々、そして当時の米国社会における黒人の地位などが、すべて家族(と白人の友人ひとり)の会話のなかに織りこまれていく。

しばらくはいかにも舞台劇だったとわかる言葉のやり取りに終始するが、ある事実が発覚する半ばをすぎたあたりから、一気に物語がダイナミズムを帯びてくる。前半はまったくの脇役に徹していたローズにぐっと存在感が増してきて、ヴィオラ・デイヴィスがオスカー最優秀助演女優賞を獲得したことが十分納得できる、家庭を支える強き妻そして母のすがたをそこに見た。

メジャーリーガーをめざすも挫折したというトロイのセリフには、当時のスター選手の名前が頻出、そしてもののたとえがすべて野球になってしまうのは、どこか日本の昭和の男を思わせてニヤリとするけど、彼の言葉の後ろにはもっと重く苦いものが横たわっている。タイトルのもつ意味はいかようにも解釈できるので、観る側の想像力が問われているような気がしないでもない。

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