アネット・ベニングは“奥ゆかしき女性”を演じられる数少ないハリウッド女優。まあ日本ならそんな女優はいくらでもいるだろうけど。そして実生活では、女性遍歴の豊かさではハリウッド随一、あのウォーレン・ベイテイとおしどり夫婦。そういう彼女が今回演じたのはドロシアという50代のシングルマザー。いつもよりはちょっと気の強い女性だったかなと。
時代設定は1979年、そして息子のジェイミーは15歳。この世代間ギャップがこの作品の大きなテーマ。興味深く思ったのは、私自身がちょうどジェイミーの世代であり、ドロシアは自分の母親の世代。そしてその母子の物語を、21世紀もしばらく経ったいま、ドロシアとほぼ同じ年齢になった自分が観ているという構図だった(1979年日米ヤングの生活ぶりを比較してみるのも一興)。
物語にはさらに若き同居人女性がふたり登場(エル・ファニングとグレタ・ガーウィグ)。このふたりにドロシアを加えた、女性3人の生きかたもまたテーマのひとつといえるかも。現代アメリカを彩ったフェミニズムやセクシャリティに関する文献が次々と登場、その手の分野に興味があるひとにとっては、セリフのやりとりに何度もツッコミを入れるに違いない。
前評判通りにパンク/ニューウェイヴ楽曲がふんだんに流れる。いやいや音楽だけでなく、ファッション(Tシャツに注目!)をはじめ当時の社会風俗がこれでもかとばかり織りこまれる。サントラになぜか古き良き時代のスタンダード・ナンバーがいくつかふくまれている意味、そしてこの作品のタイトルがもつ意味は、最後まで観てじゅうぶん納得しました。
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