東京湾に謎の巨大生物が…このとき日本国政府が見せた愚かな対応は、あきらかに「3・11」のときのそれを皮肉っていると、観ている誰にもすぐわかるはず。いままで我々はゴジラ作品によって、ゴジラのむこうにその時代おりおりの日本と日本人を見てきた、といえばカッコよすぎるけど、そういう意味においてはその集大成的な作品といえるのでは。
そして単に「3・11」だけにとどまらず、そこから派生した「核」の問題、アメリカを中心とした外圧、自衛隊の存在意義…ゴジラの存在がまるでそれら諸問題の比喩であるかのように、いまの日本を反映した完全なる社会派作品といってもよく、単なる怪獣パニックものと思って観た子供たちなどは、ゴジラ登場場面以外は退屈に感じてしかたないのではなんて思う。
そしてパニック・特撮ものによくありがちな、湿っぽい家族愛や男女愛をムダに織りこむようなことがほとんどなく、ゴジラ対日本政府という対立軸だけをぐいぐい見せていくのが潔く心地よい。そのぶんひとりのヒーローがふつうの人間の能力以上に活躍し、国家を窮地から救うことの多いハリウッド映画的視点でみれば、メリハリをもっと効かせよということになるかもしれない。
そう、最終的な物語の着地に至るまでのプロセスが、誰ひとり突出することなく、和を以て貴しとなすチームプレーにて終始するところがいかにも日本(人)的で美しい。とにかく全国民必見とまでは言わないけれど、たかが怪獣映画だと思っているひとにこそぜひ観ていただきたい作品。邦洋合わせ、ここ数作のゴジラもののなかでは一番の傑作だと思います。
ログインしてコメントを確認・投稿する