「私の歌はどちらかといえばHappyよりUnhappyなものが多いのですが、きょうここにいらっしゃったみなさんはもう十分に人生経験を積んでおられるかたばかりと思うので、私の歌でみなさんそれぞれの思い出に浸っていただければうれしく思います」…ライブが始まってしばらく、彼女の言葉。あたりを見回すとたしかに人生経験豊富なみなさんばかり、もちろん女性が圧倒的に多い。
“ここにいるのはあなたにふられた私”“あなたが好きなあのひとは私よりずっときれい”…彼女が描く世界はとてもシンプルで直接的、ストレートが胸元にズバっと飛びこんでくる感触。遠まわしな表現や比喩的な引用も少なく、時間や場所が限定される固有名詞もあまりない。そう、ほとんどの曲はあなた(男性)と私(女性)しかそこにいないのです。
「うそつき」「誰より好きなのに」もうこの2曲で十分。こんな歌世界をすぐ目の前で歌われたら、かっての自分自身に思いをはせた女性のみなさん、そらグッとくるわなあ。再び周りを見回すときっちり何人かの女性が目を潤ませていて、なんと私の近くにいたコワモテのオッサンもしきりと涙をぬぐっていた。このオッサンの過去にいったい何があったんだろう。
女性パーカッショニストと男性ギタリストだけをしたがえたシンプルな構成。彼女はずっとピアノに向かったままでの十数曲。そのなかには男性歌手たちとのデュエット曲ばかりおさめた最新アルバムからの曲もいくつか。ずっと前から一度は観たいと思っていた彼女のライブにようやくめぐりあえて、私自身はいまとてもHappyな気持ちでいっぱいです。
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