こういう写真展にふれると“私たち日本人はたまたま幸せな場所で生きているなあ”とつくづく感じます。地球上にはいくつもの国があって、いくつもの問題を抱えていて…。そんな現実をわかっているようでいてちっともわかってないとあらためて思い知らされるし。2013年の1年間にプロのカメラマンが撮った報道写真を対象に審査した「世界報道写真コンテスト」の入賞作品62点。
事件や事故、国家同士や宗教をめぐる争い。瞬間瞬間を切り取った鮮烈な作品ばかり目の当たりにするとこちらは沈黙するしかありません。ど素人の感想になってしまいますが、カメラの性能・撮影技術が素晴らしく向上した結果、かって見たさまざまな報道写真展よりずっとリアルで生々しい作品が並んでいるのではないかと思いました。
そこに写された人々の表情は喜びや楽しさいっぱいのものより、悲しみや怒りであふれたものがほとんどで、すべての作品にふれたあとはしばらく重たい気持ちにもなりました。ふだんお気楽に生きている自分を省みたりも…。展示の最後の部分でスポーツにおける美しい瞬間をとらえた作品がいくつかあり、やや気持ちは救われましたが。
会期は21日まで。「東日本大震災報道写真展」も併設。こちらは既知の写真がいくつかあったけど、あらためて事の大きさ、つらさ、悲しさが身にしみてきます。3年半が過ぎたいま、やや客観性を含みつつこの大災害のことを概観できるのでは。冒頭で“日本人はたまたま幸せな場所で”と書いたけど、そうでない日本人が多くいることもあらためて思い知らされました。
こないだ林典子さんの写真集のニュースを見てたら、去年写真展に出展されていた、夫に硫酸で顔を焼かれた女性の写真があるのを見つけました。
林典子さんは、誘拐され無理矢理結婚させられる少女達の写真などを撮って発表されてますが、こういう悲惨な現場を見て、彼女たちを助けるより、そのありさまをそのままフィルムに収めるという、カメラマンとはつくづく因果な職業やなぁと思います。でも、手を差し伸べたからと云って、彼女たちを救えるわけもありませんけどね。
いろんな事を考えながら、自分はこんな目に遇わないで良かった…とか思いながら、毎年見に行きます。
また反対にカメラマン自身にいまにも身の危険が迫っているというタイミングで、よくこんな瞬間にシャッター押せるよなあ、早いこと逃げろよと言いたくなる作品も多くありました。こちらのほうが多いかも。
どちらにしても使命感に支えられた大変な仕事ですね。いろいろ考えさせられました。