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2019年11月22日16:53

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モデナからボローニャへ

7月9日

ヴェローナの街に別れを告げ、モデナで途中下車しボローニャへ移動する。夕方ボローニャの空港で娘と合流しウィーンに戻るのだ。みなせはマントヴァで会議があり仕事が終わると空港にやってくる予定だ。電車はマントヴァを通っていった。進行方向右に湖が見えた。さして大きな街には思えないが北イタリアのルネッサンスの中心として重要な場所だという。イタリアの街はそれぞれが独立していてそれぞれの文化が花開いた歴史がある。どこもかしこも世界遺産である。

モデナも小さな街だが、駅前から中心までバスに乗ることにする。ドゥオモの鐘楼が見えたらバスを降りようと窓から懸命に探すが、これが案外難しい。一方通行が多く、地図を睨んでいてもどの道を走っているのか見当もつかない。当たりをつけて降りると、さあ、私はどこにいるんでしょう状態。幸いにも人通りの多い門をくぐると、そこはグランデ広場で立派なドゥオモと市庁舎が聳えていた。11世紀から12世紀に創建されたドゥオモは淡いピンク色で正面に大きなバラ窓を持ち、扉には旧約聖書などをモチーフにした味のある、ロマネスクらしいレリーフが施されている。ここでも扉の脇には例の対のライオンが迎えてくれる。まるで神社の狛犬ではないか。このライオンは古代ギリシャかバビロンか、どこだったか馴染みのある顔をしている。
ドゥオモの中は内陣が一段高くなっていて、奥のクリプトは半地下にある。お宝はいろいろあるのだろうが、最も私を喜ばせてくれたのは、クリプトにある柱頭のたくさんのレリーフだ。プリミティヴで、奇妙な、愛嬌のある動物や人が上の方から私を覗いている。ひととおり写真に収めると、椅子に腰かけてどっぷりとロマネスクの世界に浸っていた。

モデナはこれだけで大満足、”スタッチョーネ、スタッチョーネ”と叫びながら正しく駅に戻る。次にボローニャまでの切符はゲットするも何番線から何時の発車なのか、行き先がわからなければ掲示板も読めない。切符を買ったときに確認すべきであった。また列車に乗る前に切符を刻印しなけらばならないが、これを探して右往左往する。切符を手に5番ホームに上がると、アメリカ人らしき若者二人が”刻印機はどこにありましたか?”と聞いてきたので、”階段下りて右側よ”と得意げに教える。皆慣れない国で多少の不安を感じてるんだな、これが旅をするということなんだろう。
ボローニャ到着、空港行きのバスを確認すると、今度は”チェントラーレ”を連呼しながらやはりバスに乗り中心あたりで降りる。絶対に行かなければならないのが、サント・ステファノの教会群で、ロマネスク、ビザンチンの教会が点在している貴重な、やはり巡礼の地だ。街の中心のマッジョーレ広場とサン・ペテロニオ聖堂を確認したところで、腹ごしらえをする。洒落た通りの洒落たレストランで一人ボロネーゼ、ワインはエミリア・ロマーナ州の赤の発泡酒とする。ゆったり楽しみたいところだが、本当はみなせと二人旅のはずだったのに、とか、彼女が案内してくれるはずだったのに、などと恨み節が始まる。正直、真剣に準備をしてこなかったのは自分の落ち度、怠慢なのだが。
ボローニャの街は歴史のある、というべきところだろうが、どこもかしこも古すぎて少々薄汚れたような印象を得た。傾いた塔やら、この街独特のポルティコと呼ばれる屋根付きの歩道も、すばらしい意匠で飾られているのだが、なんというか、私はボローニャに受け入れられなかった感があるのだ。結局のところ私は一本北の通りを下ってしまい、道に迷い、念願の教会群には辿り着くことなくボローニャを去ることとなる。教会は五万とあるので、間違った教会に入り、なんかヘンだと思いながら無理やり自分を信じ込ませたのだ。真実は娘と会って、話をしてから判明した。ガックリと肩を落とす私に娘は、”また来ればいいじゃん”、といとも簡単に言ってのけた。


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