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2022年06月23日20:35

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神宮スズメの独り言2022〜89〜勝つということ

昨日の中央と東洋の壮絶な1部2部入替戦から明けた今日。神宮では2部3部入替戦と3部4部入替戦が行われた。中でもボクがどうしても見たかったのは今季から4部加盟が認められた帝京平成大学。それまでは千葉県リーグに所属し昨年秋には2部優勝を果たしていたが、入替戦を辞退し東都への移籍参入が認められた。

東都の4部はこれで4校となり通常の2勝勝ち点制をそれぞれ2度行う。つまり3校を相手に2度ずつ行うためすべてから勝ち点を上げれば12勝で勝ち点は6となる。そしてこの帝京平成は12連勝で勝ち点6を取って4部優勝を成し遂げた。

市船や八千代松陰、千葉黎明、中央学院などの千葉県の強豪出身が目立つがそれ以外にも横浜や履正社、大阪桐蔭など全国レベルの強豪からの部員もいる。部員数は東都ではもっとも多い日大に次ぐ155人。昨年秋の4部優勝校の東工大は部員が19名。2位の都市大が28名、3位の芝工大が32名である。全勝は当然。コールド制であればそのほとんどが成立している試合で、最大得点差試合は32−0。20点以上とった試合は3試合で一桁得点だった試合は2試合だけだった。

そしてその監督は河野和洋さん。高校野球ファンなら多くの人が知っている明徳の選手で馬淵監督から星稜の松井さんに全打席敬遠を命ぜられた投手だ。いや、もともと彼は投手ではない。試合が始まる前から松井さんへは全打席敬遠することが決まっていたからこそエースを登板させず外野手であった河野さんをマウンドに送り、そして勝利を得た。

高校野球において逃げるが勝ちという戦術を甲子園の大舞台で命ずる監督をボクは絶対に評価しない。もちろんそれは反則でも何でもない。だからこそこの逃げるが勝ちという戦術を是とするのであれば明徳はエースを立てて堂々とそれをやるべきだったとボクは思う。しかし明徳はエースを温存しその汚れ役を控え投手にやらせた。

とても卑怯なやり方に見えた。そして星稜を破って迎えた2回戦では明徳は敗れた。当然だとボクは思った。あんな勝ち方をして誇り高く2回戦を戦える人間などいないからだ。いやいたとすればそれはこの世でその監督ただ一人だけだろう。

私はあの時の怒りはいまだに忘れてはいない。プロじゃない、高校野球の指導者としての話だ。河野さんはそういう意味ではものすごい犠牲者である。今でこそ名将の名をほしいままにしている明徳の監督であるが、明徳が甲子園で初優勝を遂げた時松井さんはこれで心の重荷が解けたでしょうとその監督をねぎらった。

松井さんの人としての器の大きさと素晴らしい人格を世間に見せた言葉だったとともに、その監督はこの言葉を初優勝の場でどのような気持ちで聞いたのだろうかと今でも思う。



その河野さんが作ってきたチーム。帝京平成は試合前から活気のある姿を見せていた。河野さんは自らノックバットを握った。試合前のグランド整備が終わると全員がきちんと整列して「ありがとうございました」とグランド整備に携わったスタッフに頭を下げた。

100人を超す控え部員が1塁側に陣取り、その向こうでは5人のチアがダンスを披露している。ブラバンもなくその音楽も聞こえないが、攻撃時に見せる演技はとても上手とは見えなかったが、近い将来ここでもっと大勢のチアにブラバンも交えて晴れ姿を見せたいという気持ちは伝わってくる。指導者と思しき人が彼女たちのダンスをカメラに収めていた。

ファウルボールの処理も神宮のルールにのっとって控え部員が手早く行っていた。東都創設当時からの加盟校である日大のようにわざわざネット裏で拾ったファウルボールをブルペン近くまで持っていきネット越しに投げ返すなどというふざけた行為もない。気持ちのいいチームだとボクは思った。

試合は帝京平成は主将の更田君が先発。横浜高校の出身。成蹊は甲斐君、八王子学園八王子高校。ともに強豪校の出身だ。

1回の表の成蹊は先頭が三振に倒れたが連打で1死1・2塁。ここで4番の上原君はセンターへの大きなフライ。2塁走者はタッチアップ。犠飛成立という状況で1塁走者はセンターが3塁へ向けて中継のショートに送球したのを見て2塁を狙った。しかし捕球したショートはすぐさま2塁へ送球。間一髪アウトとなって併殺となる。

この走塁は結果的には失敗したが積極的なものでよかったとボクは思った。この回に放った成蹊の安打も芯を捉えたものだったのだ。

その裏の帝京平成はこれも2安打と四球で2死満塁とチャンスを作る。しかし甲斐君は内野ゴロに打ち取って失点を許さない。

2回の成蹊は先頭打者が安打で出塁。3部校の意地を見せる成蹊。しかし併殺でチャンスをつぶすとその裏、帝京平成は1死から守屋君が2塁打、中島颯君のタイムリーで先制した。

1回2回と併殺でチャンスをつぶした成蹊に対し、1回こそ満塁のチャンスを逃したが2回には早々に先制した帝京平成。前評判通りの爆発力をこれから発揮するのかと思われた。

しかし・・・・

成蹊の甲斐君は粘りの投球を見せ守備陣もそれに応える。3回は1死1・2塁からレフト前に抜けんかとする打球にショートの小林駿君がグラブに当てて2塁封殺。1・3塁から2塁への盗塁を試みた帝京平成に対して成蹊の捕手吉澤君は一機に3塁へ投げ本塁をうかがっていた3塁走者を刺してこの回を押さえた。

4回は2死から四球を出し盗塁を決められるが内野ゴロに押さえ、5回は三者凡退。6回に先頭に安打を許すも2死から連続三振に取った。そして7回、これも先頭に四球。1死後盗塁を刺すと、さらに四球を出したもののこれも盗塁で刺した。

しかし、甲斐君の投球にも疲労の色が見え始めた。制球が悪くなっておりボールが浮いてきている。それでも執念の投球を見せる甲斐君。

成蹊は4回と6回に相手エラーで無死1塁とするが、ともに4番の上原君が併殺打。6回までに併殺は4回を数えた。そのうち3度は無死1塁からだった。

8回の成蹊は1死2塁からの送りバントを2塁封殺され9回も無死1塁からのバントも2塁封殺。そしてこの日3打席すべて併殺の上原君が打席に入った。そして打球は1塁ゴロ。またしても併殺で試合終了かと思われたが、1塁手の2塁送球は低くカバーに入ったショートが捕球できなかっただけでなく、その送球は2塁ベースに当たってライトが処理するまで跳ね上がった。1死1・3塁。そして帝京平成のエース更田君はこの回2つ目の四球を与える。

まるで昨日の中央の最終回の攻撃のようだ。1−0でリードした東洋が四球を連発したあとエラーも絡んで同点とされ最後は逆転サヨナラとなったあの試合。今日も四球2つとエラーで1死満塁となった。ここで打席には守備から途中出場している倉田君がはいる。佼成学園出身の3年生。

彼の打球はセンター右への飛球。これが犠飛となって成蹊は9回に同点に追いついた。劣勢と思われていた成蹊が執念の同点劇を見せたのだ。そして9回の裏、甲斐君は四球を2つ出しピンチを招いたがなんとか内野ゴロ2つに仕留めて無失点。延長タイブレークにはいる。

だが、甲斐君はもう限界だった。タイブレークの10回表、成蹊はバントを失敗し、1死からなんとか送ったものの無得点。帝京平成も送りバントは3塁封殺となるが、171球目となった甲斐君のボールは前田君にライト頭上に運ばれた。成蹊のライト倉田君は何とかグラブには当てたが打球は後方にこぼれサヨナラとなった。

真っ向勝負ではない勝ちを甲子園で経験しそれなりの批判を浴びた河野監督。彼はどういうチームを作りたいのか、機会があればぜひ聞いたみたいと思う。

真っ向勝負なら戦力的には勝っているはずの今日の試合。成蹊の甲斐君の力投に思わぬ苦戦をした。

勝つということは簡単ではない。だが今日の帝京平成は試合に勝つということがどれだけ難しいと考えていただろうか。もしかしたらそれほど難しいと考えていなかったのかもしれないし、それはわからない。間違っても相手に4番を敬遠することなどはまったく眼中にはなかっただろう。もちろんそんなことをしなくとも楽勝だと・・・・

勝つための全打席敬遠を全国の舞台でやらされた河野監督が勝つためのゲームプランをどう作っていくのか。将来的には大学日本一を目標としドラフト指名が続出するようになることを目指すチームと全国優勝やプロ入りなどは論外で青春野球を楽しむチーム。しかし、その強豪を目指すチームは青春チームに大苦戦した。

高校野球にも言えることだが、プロ野球育成軍団のようなチームも楽しく青春野球を楽しむチームも同じ年代の野球だ。そしてプロ育成チームが勝つとは限らないから学生野球は面白いのだ。

河野監督はどのようなチームを作っていくのか。今後楽しみである。



2022年6月23日 東都大学野球 春季3部4部入替戦 第1戦(於 明治神宮野球場)
成蹊
000 000 001 0 = 1
010 000 000 1x = 2
帝京平成

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