スポーツは人間がやっているから面白い、あるいは自身の糧になるのだとボクは思う。
毎年箱根駅伝の放映権を持っていることで4日は夕方まで昨日の箱根の結果やエピソード紹介を繰り返しひたすら視聴率稼ぎに狂う日テレ。しかし高校サッカーの放映権も持っている。
この大会における青山学院に相当するのは青森山田だろう。ならば次の駒澤や順大予想はどのチームなのか。別に競馬じゃないのだからそんな順位予想があたるかどうかなどはどうでもいい。今日のフクダ電子アリーナでの準々決勝の第2試合はその予想がどうだったかという以前にものすごい試合となった。
静岡学園と関東第一。2年前ボクは埼玉スタジアムで青森山田との決勝戦を見た。戦前では不利を予想されていた静学は逆転勝利で優勝した。このまま勝ち上がれば再び青森山田と当たる可能性がある。それに対して関東第一はボクも見た開幕試合では6−0と圧勝しながらも2回戦では守備が固い尚志を相手に0−0でのPK戦を制した。3回戦は優勝経験もある矢板中央を下しての今日の試合だ。
Jリーグ内定者を4人も擁する静学は余裕満々でボールを回してきた。まるで第1試合の前橋育英を見る思いだ。ボールに対する身体の入れ方がうまく相手ボールを奪うとすぐにスペースへのパスでどんどんゴール前に攻め込む。さらにこのチームの特徴はサイド奥深くから送り出されるグラウンダーの速いクロス。そこに何人もが突っ込んでくる。誰かが触ればゴールだ。
だが、関東第一は完全に守備一辺倒の戦術をとっていた。背番号10の肥田野君は完全に下がって静学の10番古川君をマンマークしている。とにかく点を取られないことが最優先というシフトを敷いていた。
それに対してボールポゼッションで圧倒的に優る静学はいつでも、そして何点でも取れるように見えた。だが、前半を終わって0−0。
何度も何度もゴール前に迫りながらも決定力がない。そして後半20分。左からのクロスをヘッドで折り返したボールに小泉君が叩き込んだ。ボールを吹かさない低い弾道の素晴らしいシュートだった。誰もがこれで決まっただろうと思ったはずだ。
少なくとも関東第一は勝つためには前に出なければならない。それがゆえにさらに失点を重ねるとも思えた。静学も守備的な布陣を敷かなかった。さらに2点目を狙ってきたように見えた。もちろんその戦術は間違っていない。それに対して関東第一はこれといって戦術を変えたようには見えず相変わらずゴール前に攻め込まれていたのだ。
だが、引いて守りながらも起死回生のロングフィードが左サイドに出た。駆け上がる日下君は静学のDFを振り切って何とか左足でゴール前にボールを送った。これがクロスだったのかシュートだったのかは本人すらわからないだろう。とにかくゴール前にという思いだけが運んだボールだった。
このボールは反応したGKの手は交わしたがゴール右に切れていく。しかし、そこに坂井君が走りこんできた。必死にスライディングで出した右足にあたったボールはゴールネットを揺らした。
ボクはその時すぐに思った。関東第一のシュートはこれが何本目だったのだろうかと。これまでシュートまでいった場面の記憶がない。まさか・・・
それでも、いやそれだからこそこのシュートの威力は静学の選手を打ち砕いたのかもしれない。この時の時計はあと数秒で80分を刻んているはずだったのだ。
ロスタイムでも静学はチャンスを作って枠内シュートを放ったが関東第一のGKに阻まれた。そして試合終了。PK戦となった。
いくら何でもこの状況でのPK戦では静学は苦しい。もう能力資質の問題ではないからだ。静学は2人目と3人目が失敗し結局PK戦で4−3で敗れた。
いくらプロ入り選手がいるとはいっても高校生だ。いや高校生でなくともあと数分で勝利を逃した直後のPK戦でちゃんと入れろというのはプロでも難しいだろう。高校生もプロも人間である。コンピュータが試合しているわけではないからこそミスも起これば、考えられない奇跡も起こる。だからスポーツは面白い。
2022年1月4日 第100回全国高校サッカー選手権 準々決勝(於 フクダ電子アリーナ)
関東第一1−1(PK4−3)静岡学園
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