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2021年10月18日15:37

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「色絵 うがい碗」

 今回は、「色絵 うがい碗」の紹介です。


写真1: 立面

写真2: 見込面

写真3: 底面


生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代前期
サ イ ズ : 口径;14.6cm 高さ;6.7cm 底径;5.0cm



 なお、この「色絵 うがい碗」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。

 つきましては、その際の紹介文を、次に、再度掲載することをもちまして、この「色絵 うがい碗」の紹介に代えさせて頂きます。





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              <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー208 古九谷様式色絵うがい碗     (平成27年9月1日登載)
  

 うがい碗で、外面まで内面と同じような絵付けをされているのも珍しい。
 うがい碗の場合、外側は無文の場合が多いのである。

 底の方が厚く作られている。
 底の方が厚ければ、重心が低くなり、起き上りこぼしよろしく、転倒しにくくなる道理である。
 しかし、この場合、それを意識して作られたのであろうか、、、?
 初期の頃は、多くの器物について、底の方を厚く作っているのが特徴で、この場合も、単にその例に従ったに過ぎないのではないだろうかと思ってしまうからである。
 この場合は、怪我の功名というところであろうか、、、?

 また、高台が、下の方にゆくにしかがって広くなっている。つまり、バチ高台である。
 バチ高台になっていると、碗を伏せる時、高台を指でつまんでもズリ落ちないので、片手で伏せることができる。
 伊万里の場合、高台が、下の方にゆくにしたがってつぼまっている場合が多いので、これは、わざわざ、そのように造形したのかもしれない。

 高台内に1本ニューが入っているが、現代に於いては、「うがい碗」として実用に供することはないのであり、鑑賞用とするぶんには支障がないであろう。

 
  江戸時代前期    口径:14.6cm  高さ:6.7cm  高台径:5.0cm





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*古伊万里バカ日誌137 古伊万里との対話(うがい碗)(平成27年9月1日登載)(平成27年8月筆)  

 
登場人物
  主   人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  うがい碗  (古九谷様式色絵うがい碗)


・・・・・プロローグ・・・・・

 かくも猛暑を振るったこの夏も、やっと峠を越した感がある。しかし、異常気象の続く昨今、まだまだ予断を許さないものがある。突然、厳しい残暑に見舞われないとも限らない。
 ちょっと一息ついたその間を利用し、主人は、久しぶりに古伊万里との対話をしたくなったようで、押入れから古伊万里を1点引っ張り出してきて対話を始めた。

 

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主人: 今年の夏は暑かったな〜。もっとも、思えば、毎年こんなことを言っているような気がするな。こんな調子では、どんどん気温も上がり、そのうち、人類は絶滅してしまうのだろうか・・・・・。まっ、それも、私が生きている間には現実のものとはならないだろうけどね。その点、お前たち陶磁器はいいね。気温がいくら高くなったって、死滅するようなことはないものな。
 さて、お天気へのボヤキはこのくらいにして、お前との対話を始めよう。
 私は、お前を見るたびにゾクゾクとするんだ。感動するんだよ。

うがい碗: ありがとうございます。私のどこがそのように感じさせるんでしょうか。

主人: まず、その「赤」がいいね。明るい「赤」ではなく、ちょっとくすんだ「赤」で、しかも、所どころ、黒っぽく変色しているところなど、単調さを破り、緊張感を漂わせているな。
 また、文様もいいね。普通、うがい碗は、外側は無地なんだが、お前の外側には、内側と同じ文様が描かれ、陳腐さを排除している。それが、見る者の目を圧倒するんだよね。「これでもか!」ってね。
 それに、「赤」は、菊の花弁を表したのだろうけれども、内側をじっと見ていると、地の底からか、火口からか、マグマが噴き上げてくるような勢いを感じるんだよね。また、内側をじっと見ていると、地の底か、火口にでも吸い込まれそうになるんだ。
 そして、構図というか配色もいいね。内側の中心の「黄色」が効いているね。もっとも、「赤」と「黄色」だけでは変化がなくて面白くないが、そこに、「緑・青・紫」の三色の葉を配置することによって平凡さを脱却しているな。しかも、それを向かい合わせて二か所に配置することによって、微妙にバランスを保っているものな。
 内側に描かれた文様は、デザイン的にも優れているね。この文様は、内側全体としては「菊」をデザイン化したんだろうね。三色の葉っぱがあり、「赤」は花弁を表わし、「黄色」は花芯を表わしているんだろうね。実に大胆なデザインだよね。

うがい碗: 過分なるお褒めの言葉をいただき恐縮です。
 ところで、「うがい碗」って何ですか?

主人: うん。「古伊万里再発見」(野田敏男著 創樹社美術出版 平成2年12月25日発行)という本の202頁〜204頁にかけて、「うがい碗」のことが書かれているので、そのうちの一部を紹介しよう。



「鉄漿(かね)あるいはお歯黒といっても、若い人たちには聞きなれない言葉だと思うが、鉄漿(お歯黒)で歯を黒く染めることを「かねつけ」、「はぐろめ」または「つけがね」といったのである。
 その起源は不明で、南方から伝わったという説もあり、古くから行なわれていたらしく、中国の古書『東夷伝』、『文選』などに日本民族の歯黒の事実が記述されている。平安・室町時代には、一般庶民にはおこなわれず、貴族武家階級の女性間で成人になったしるしとして「かねつけ」の儀式が行なわれた。一部には、男性の元服後につけたという記録もある。
 江戸時代になると、貴族階級専用だったものが町人百姓の女子にまで普及して、女子の既婚者が婚姻と貞節の表示として、出産すると眉を剃る風習と共に、毎朝髪を結うときに歯を黒く染めた。
                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 このようなお歯黒付けのとき、口中の渋みと臭みをとるために使用する茶碗を鉄漿茶碗・うがい茶碗・姫茶碗という。
                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 この磁器製かね茶碗は、大名・武家・豪商の婚礼調度品の化粧道具のなかにお歯黒道具、鉄漿壺・鉄漿沸し・鉄漿杯・五倍子粉箱・歯黒筆・耳盥・渡し金と共に必らず収められていたものである。」


 ここに書かれているように、「うがい碗」というのは、「お歯黒付けのとき、口中の渋みと臭みをとるために使用する茶碗」のことを言うようだね。

うがい碗: わかりました。
 そうしますと、「うがい碗」というものは、ずいぶんと古くから作られてもいたわけですね。

主人: そうだね。磁器の「うがい碗」は、たぶん、磁器が作られるようになって間もない頃から作られたと思うね。お前だって、色絵磁器が作られるようになって間もなくに作られたんだろうと思うよ。だって、見るからに、「初期色絵!」という感じがするもの・・・・・。

うがい碗: それにしましても、前掲書によりますと、「うがい碗」は「姫茶碗」とも言うとありますが、私の場合は、「姫茶碗」という感じではありませんね(~_~;)

主人: そうね。我が家にはもう1点「うがい碗」があるが、そっちの方は、いかにも「姫茶碗」という感じだな。
 でもね。私は、お前のその「姫茶碗」らしからぬところが好きなんだ。「姫茶碗」、現代で言うと「お嫁ちゃん茶碗」とでも言うのかな、その「姫茶碗」らしからぬ、「お嫁ちゃん茶碗」らしからぬところが好きなんだよ。
 お前は、楚楚とした新妻というよりは、年増の、情炎な、燃え盛る炎のような妖艶さを感じさせるものね。
 私が思うに、お前の製作を依頼した親は、娘が嫁に行ってすぐに離縁されるようなことがなく、いつまでも婚家にとどまり、大名なり、武家なり、豪商なりの「奥」で権勢をふるえるようになってまでも使えるようにと願って作らせたからではないかと思うんだ。その結果、単なる嫁入り道具として作らせたのではないので、いきおい、格調高く、芸術の薫りの高いものに出来あがったのではないかと思っているんだよ。

うがい碗: 重ねての過分なるお褒めのお言葉、ありがとうございます(嬉)。

主人: なにね。骨董なんて、良いほうに、楽しいほうにと、どんどん夢をふくらませていったほうがより楽しくなるものね。



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