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2019年10月14日12:16

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本 ”夜行” 森見登美彦

”夜行” 森見登美彦

デビュー当時から好きな森見登美彦氏、最近文庫化されたので買おうか、
と思っていたら、図書館にあったので借りました。

学生時代の英会話教室の仲間五人、京都・鞍馬寺の火祭りを見るために集まった。
10年前の同じ火祭りの夜に一緒にいた美女・長谷川さんが突然消えてしまって以来に。
久しぶりに集まった五人はこの10年間に旅先で起こった不思議な体験を話し出す。
尾道に家出した妻を探しにいった話、飛騨高山(平湯温泉)に友人の恋人姉妹と
行った話、津軽で妻の幼馴染を目撃した話、天竜峡に向かう電車の中で会った
偽坊主と女子高生の話。その旅の行き先にあったとある画家の不気味な”夜行”の連作。
そして火祭りの夜にみんなとはぐれた”私”は画家の妻になった長谷川さんと出会う、
そこには”夜行”とは逆の”曙光”の絵がある世界だった。
果たしてこの十年”私”がいた世界、そして今いる世界は、、、。

怪談を語り合う百物語のようなそれぞれの話、
迎えに来た夫を知らないという妻、占い師に死相が出ていると言われ
諍いが始まる姉妹、旅先の洋館の二階の窓から見えた妻の幼馴染、
ニセ坊主と”私”を翻弄する得体の知れない女子高生。
そしてそれぞれの地を夜行列車が走り、顔のない美女がその列車を見送る絵。
登場人物の語る女性の話が謎だらけで、そしてどの話も謎のまま終わる。

この不可解さ、不気味さがずっと続き、
物語の闇の出口はどこかと夜行列車の旅を楽しむかごとく、
読み進めることができました。
飛騨とか津軽とか行ったことのある話はより情景が浮かんだし、
行ったことないところにも旅情がかきたてられたし。

そして最後の章、10年間行方不明なのは長谷川さんだったのか、
それとも”私”だったのかという、パラレルワールド? はたまた”私”の妄想?
そのどちらとも取れる終わり方、余韻がよかったです。

もともと奇想天外な発想が得意な森見氏、それをドタバタノリで書くか、
闇の世界のように書くか、の違い、なんでしょう。
どちらも真骨頂、以前読んだ”きつねのはなし”同様の、
ひんやりした話もよろしいです。

”夜行”列車の旅や古い町の風情、百鬼”夜行”の不気味さ、
そして美女の恐ろしさ、堪能いたしました。

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