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2019年11月19日02:54

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2019年11月 12日(火) ドイッチェオーパー・アム・ライン(デュイスブルク)  「ラインの黄金」

勝手知ったるデュイスブルグと言ったら言い過ぎだが、5月のコンツェルタントの「リング」の時に少しは劇場近辺の食糧事情と言うのも分かったので、同宿のF氏(氏はデュイスブルクは初めて)と待ち合わせ、メルカトール・ハレのある建物の1階にある中華料理店で夕食を取ってデュイスブルク劇場に向かった。私はワンタンとチャーハンを頼んだが、どちらも日本のものとほとんど変わらない味で、チャーハンの分量は2倍くらい。清涼飲料水も入れて€10.00を切るのだから安い。
このプロダクションは演出 ディートリッヒ・W・ヒルスドルフDietrich W. Hilsdorf、舞台美術 ディーター・リヒター、衣装 レナーテ・シュミッツァー、照明 フォルカー・ヴァインハルト、ドラマトゥルギー ベルンハルト・F・ローゲス。指揮 アクセル・コーバー。 配役 ヴォータン ジェームス・ラザフォードJames Rutherford、ドンナー トルベン・ユルゲンスTorben Jürgens、フロー Jussi Myllys、ローゲ レイモンド・ヴェリーRaymond Very、フリッカ Katarzyna Kuncho、フライア アンナ・プリンチェーヴァ、エルダ ラモナ・ザハリア、アルベリッヒ シュテファン・ハイデマン、ミーメ フローリアン・シムソン、ファゾルト Bogdan Taloş、ファフナー ルーカス・コニエツニーLukasz Konieczny、ヴォークリンデ ハイジ・エリザベス・マイヤー、ヴェルグンデ マリア・ヒルメス、フロースヒルデ アンナ・ハーヴェイ。デュイスブルガー・フィルハーモニカー。
7時半開演。席はパルケット右3列目58番。ほぼ真ん中。€66.00。サイクルの割引はない。
第1場。黄金色に近いプロセニアム・アーチにはイルミネーションがついており、その内部に赤いカーテン状の幕。幕の前中央には緑の布を張った円形のテーブル。その上にワイン・ボトルとグラスが1つずつ。そこに左手からちょっと恰幅の良い赤紫の三つ揃いのような服装の男が出てくる。そしてワインを飲み、ドイツ語で何かしゃべる。恐らくこの演出について重要なことをしゃべったのだろうが、何と言ったのか全く分からなかった。まだ演奏は始まっていない。
やがて重低音かつ最弱音が聞こえ始め、次第に音が大きくなる。いよいよドイッチェオーパー・アム・ラインのデュイスブルクの「リング」の開始だ。オーケストラはデュイスブルガー・フィルハーモニカー。少しすると赤いカーテンにシルエットが浮かび上がり、幕が上がると意外や意外。プロセニアム・アーチに沿って宮殿にありそうな巨大な部屋が出現する。天井には丸い穴があきそこからシャンデリアを模したような装飾が釣り下がっている。両側の壁は下がウォールナットのような木製、上は白の漆喰のようだ。正面にはガラス張りのこれも大きな窓。そして左手の壁には白い鋼鉄製の非常階段。
階段の上からヴォークリンが「Weia! Waga! Woge, du Welle」と歌いながら下りて来る。続いてヴェルグンデとフロースヒルデ。ちょっと豪華な装飾を施したピンク系のキャミソールのようなものに、緑系のこれまた優雅な襞入りの巻きスカート(前に開けると太ももが見える)をはき、肩にはショール。皆同じようななまめかしい格好をしており、舞台上に4か所ほどある出入り口を使ってこの空間をぐるぐる回り見張りをしている。
そこに左手から黒いリボンで目隠しをされたアルベリッヒが先ほどの赤紫の三つ揃えの男に付き添われてやって来る。後でわかるのだが、この赤紫の男はローゲだった。それで赤系の衣装を着ているわけだ。ここにも演出家の意図が感じられる。これから進む物語は、ローゲが操るのであるまいか。アルベリッヒは一人になるとそのリボンを外し、その目は近くにいるかわいらしい乙女たちに釘付けになる。そして追いかけっこが始まる。見てくれの良くないアルベリッヒではあるが、3人の乙女たちはまんざらではない様子。捕まってみたり、あるいは愛撫したりする。しかし本気では彼を相手にしないのでアルベリッヒは地団太を踏む。
アルベリッヒが追いかけっこに疲れ果てていると、ガラス窓の向こうが明るく輝きだす。彼があれは何かと聞くと娘たちはラインの黄金であることを明かすが、彼は「Mir gält' es dann wenig!(俺には関係ないさ)」と言うので、気を許したヴォークリンデとヴェルグンデはフロースヒルデの制止にも関わらずべらべらとラインの黄金の秘密をしゃべってしまう。そして2人が黄金を鋳直すことが出来るものは限られていることを話すとフロースヒルデも安心し、3人はのんきに「Wallala! Wallaleialala!」と歌う。ところが欲に燃えたアルベリッヒは「愛」を断念し、ガラスの向こう側に行ってラインの黄金をかっさらって行ってしまう。悲鳴を上げ、後悔と悲嘆にくれる3人の乙女たち。カーテンが閉まる。
第2場。カーテンが開くと第1場と同じ場所。ただし前方中央の低めのテーブルのほか、右手奥にそれより少し高めのもの、左手中間部にダイニングに向くような腰高のテーブル。いずれも緑のテーブル・クロスが天板下から床へと下がっている。やがてフローと柄の長いハンマーを持ったドンナーが登場。そしてフリッカが黄土色の長い(レイン)コートを着て車いすに乗ったヴォータンを押して登場する。ヴォータンは車椅子から降りる際に腕で難儀そうに足を持ち上げて床におろしていたが、すぐに普通に歩きだした。これも意味不明。フライアのことでフリッカがヴォータンを責めていると、そこにフライアが駆けこんできてヴォータンに抱き着く。ファゾルトとファフナーが彼女を追ってやって来てヴォータンと口論になる。彼は巨人族との契約をはぐらかそうとなって必死で、ローゲがなかなか現れないのでイライラしている。そこにローゲがはしごの上に登場。なんとラインの乙女たちも一緒だ。ローゲばかりでなく、乙女たちも下に降りてきてソファーの上で媚態を披露する。ローゲは乙女たちとやってきた手前、ラインの乙女たちがアルベリッヒに黄金を奪われてしまい悲嘆にくれていること、そしてヴォータンにそれを取り返してほしいと嘆願していることを話す。ヴォータンは「馬鹿か、お前は!」と相手にしないが、ファゾルトはこの話に興味を示す。ヴォータンはその黄金から作った指輪についての伝承を思い出し、フリッカは装身具にした黄金に目がくらむ。巨人族はフライアの代わりにアルベリッヒの宝で譲歩する。ヴォータンは一度は「私の持ち物でないものを」と良心を示すが、フライアを人質として連れ去られるので、ニーベルハイムに向かうことに同意する。
第3幕。ニーベルハイム。アルベリッヒの手下たちは炭坑用の大型鉄製台車に黄金を詰め込み、忙しそうに働いている。アルベリッヒはミーメを呼びつけ、黄金の頭巾の進捗情報を聞き出そうとする。実はミーメは既に完成させていて、おずおずと出来上がった布のように滑らかな黄金の頭巾を差し出す。アルベリッヒはそれを使って姿を消し、ミーメをいたぶる。そこにローゲとヴォータンが到着し、物陰からその様子を観察する。アルベリッヒが去るとローゲがミーメの前に現れいろいろな情報を聞き出す。ミーメは黄金の頭巾を作ったがアルベリッヒの考えていた魔力が分からなかったのだ。ミーメはアルベリッヒの接近を察知するとこそこそ逃げる。威張り散らしながらやってきたアルベリッヒはヴォータンとローゲに気づく。そしてローゲの知恵にカエルに化けさせられた末、捕まってしまう。このあたりはごく普通にストーリーが展開する。
第4場。第2場と同じ場所。縛られたアルベリッヒを引き立て、ローゲとヴォータンが戻ってくる。ヴォータンは彼の解放の代価として宝ときらめく黄金を要求する。一方アルベリッヒは安易に指輪さえ持っていれば宝など簡単に手に入ると思ってしまい、手下に宝を運ぶよう命令する。そして台車に山と積まれた財宝が届く。その中には「ノートゥング」らしい剣も入っていた。これは注目だ。これで解放されると思っていたアルベリッヒだが、ヴォータンに指輪を要求されてしまう。彼は引き渡しを拒み抵抗するが、ヴォータンに指を切り落とされ、指輪を奪われる。これで彼は解放されるが、この恨みを指輪に呪いをかけて立ち去る。そこにドンナー、フロー、そしてフリッカが現れ、二人の無事の帰還を喜ぶ。
ファゾルトとファフナーがフライアを伴って戻ってくる。早速取引が始まるがこれがちょっと変わっている。椅子を二脚、ひざを折ったフライアにその背を向けて並べ、椅子の上に「ノートゥング」を乗せてその台形の部分に財宝を積み重ねるだけでよいようだ。すなわちフライアの首から上は隠れない。それでも首から下が完全には隠れないので、黄金の頭巾、そして指輪が要求される。したがって歌詞と実際との間に齟齬が生じてしまう。しかし世界征服を目指すヴォータンは指輪だけは皆から渡すように言われても決して渡そうとしない。交渉決裂と言う段になって、エルダが現れヴォータンに今あるものは全て終わる、指輪に近づくなと言って去っていこうとする。ヴォータンはもっと知りたいことがあるので行かないでくれと取りすがる。その時どうも彼女の赤っぽい鬘をつかみ取ってしまったようだ。彼女が去ってしまうと彼は潔く指輪を巨人族に与え、フライアはヴォータンの胸に飛び込む。ファフナーは財宝をせっせと袋に詰め始めるので、ファゾルトが俺にも分け前をよこせと言う。それに対し彼は黄金よりあの女の方が良かったのだろうと言って、二人の争いが始まる。ファフナーはファゾルトの首の骨を折って殺害するとヴォータンはここで指輪の恐ろしい呪いの力を認識する。ファフナーはファゾルトの死体を底に残し、財宝をすべてもって立ち去る。ただしノートゥングだけはどういう訳かそこに残す。ドンナーが憂さを晴らすようにハンマーをたたきつけると稲光と大音響がおき、プロセニュウムの電灯が7色ではないが虹の橋を作る。ヴォータンは左にやり、右にノートゥングを持ち仁王立ちになる。フリッカが彼に寄り添うように立つ。
神々たちがヴァルハラを目指し行進を始め、ローゲが3人のラインの乙女たちとその場に取り残される。(幕)
改めてこのプロダクションも細かいことまで真剣に見ておかないと面白さが半減してしまうように思える。アレックス・コーバーの指揮するデュイスブルガー・フィルハーモニカーはなかなか素晴らしい。歌手も粒がそろっていて満足のゆく公演だった。
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