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2019年11月12日22:39

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2019年10月20日(日) オルデンブルク 「神々の黄昏」

朝06:30に食事をとり、フランクフルト中央駅07:26発のRE4504で08:49フルダ着。ここで09:04発のICE886に乗り換え10:56ハノーファー着。11:20発のREで13:23オルデンブルク着。オルデンブルクはかなり不便だ。オルデンブルクに着くと雨が降り出した。今回泊るエルメス・ホテルHermes Hotelは駅の近くだ。駅前広場を左に行き、道なりに右へ曲がると反対側の奥まったところにあった。リセプションの前にはコンプリメンタリーのコーヒーと「ベルリーナー」と聞こえたちょっとしたお菓子もあった。
この日は16:00開演なので15:20頃ホテルを出る。雨がかなり強く降っていて、おそらく15:40頃劇場着。すでに多くの人々が集まって、華やいだ雰囲気だ。
演出 パウル・エスターヘイジーPaul Esterhazy、舞台装置及び衣装 マティス・ニートハルトMarhis Niedhardt、照明 エルンスト・エンゲル、ビデオ アレクサンダー・フライシャー、ドラマトロギー ステファニー・トヴィーハウス。出演は指揮 ヘンドリック・ヴェストマン、ジークフリート ゾルタン・ニャーリZoltán Nyári(正しい発音かわからないが、以下これで行く)、ブリュンヒルデ ナンシー・ヴァイスバッハ、グンター Kihun Yoon、グートルーネ/第3のノルン アイレ・アッスゾニーAile Asszonyi、ハーゲン ランダル・ジャコブシュRandall Jakobsh、マラニー・ラング、第1のノルン マイジュ・ヴァートルオーMaiju Vaahtoluoto、第2のノルン/フロースヒルデ アン=ベス・ソルヴァングAnn-Beth Solvang、アルベリッヒ レオナルド・リー、ヴォークリンデ マルタ・イーソンMartha Eason、ヴェルグンデ ニャン・ワンNian Wang、オーケストラ オルデンブリギッシェス・シュターツオーケスター、オルデンブルク・州立劇場合唱団
昨年の「ジークフリート」はパルケット前方に座ったが、今回は1.Rang Rechts4列目24番€33.00。今回も大変売れ行きがよく残席は僅少で、ほとんど選択の余地がなかったのだ。この小さな町(人口約16万人)で6公演もやってほとんど完売と言うのは驚きだ。この席に座り、なぜこの席が残っていたのかすぐわかった。左手に柱があって視界を妨げているのだ。隣の23番であればそのようなことはなさそうだが、この席は実に見にくい。字幕すら左に寄ったり、右に寄ったりしながら見なくてはならないのだ。来年2020年の3回行われる「リング・サイクル」も早く予約をしないと良い席が取れないだろう。2階席(1.Rang)に座ってわかったがこの劇場の2階席は舞台までの距離が極めて短い。パルケット5列目か6列目が1.Rangの中央1列目に相当するだろうか。したがって良い席を買うなら1.Rangはねらい目だ。と言っても「リング・サイクル」で1番高い席が€100.00(通しで€400.00)だからたかが知れている。それでもサイクル上演になると随分高い。
今宵は午後4時の開演だ。すでに舞台上には中央部分が突き出した板壁が見えている。その右側にはドアと窓が見られる。「ジークフリート」と同じ装置のようだ。と言うことから「ラインの黄金」以下の4作は全てこの装置を使うように思える。来年のサイクルが楽しみだ。
プロローグ。少し薄汚れたような白のレースの服を着た決して若くない3人のノルンがザイルを回り舞台全体に張り巡らせている。舞台はあまり停まることも無く、ノルンたちは回転と共に次のドアを開けて次のエリアに現れる。黒い服を着たエルダらしい老婆も時々見え、彼女もザイルの一端を手にしている。また黒い帽子、黒い外套を着て斧を持ったさすらい人らしき男も彼女たちの動きを監視しているようだ。ザイルが切れるのは鋭利な角を持った岩に結びつけられたのが原因ではなく、何とさすらい人が力を込めて引きちぎったのだった。ザイルが切れてしまうと絶望したノルンたちはエルダを伴いエルダの住まいへと降りてゆく。扉が閉まる。
このセットは実に複雑に出来ているようだ。前回私の観た「ジークフリート」公演では装置が故障し演奏が途中で停まり、しかも修理の甲斐なく完璧な上演が出来ないのをご勘弁をと言うアナウンスがあって上演を続けた。この公演では問題が発生しなかったが、どうも回り舞台とその周りの壁がどちらも動く構造になっているようだ。その壁が開くと内部の模様が見えると言うわけだ。「ラインの黄金」と「ワルキューレ」は観ていないが、だんだんとこの舞台装置が分かってきた感じがする。ただしこのプロダクションは最初から通しで観ないと理解できない部分が多いことも認識させられた。
壁がブリュンヒルデの寝室のところまで開く。シングル・ベッド・ルームだ。彼女だけが寝かされていたのだからシングル・ベッドで当然で、クイーンやキング・サイズベッドが出てくる方が論理的ではない。ここに2人で寝ているのだから大変だ。寒さで目覚めた?ジークフリートが起き出し、体をこすっている。上半身はシャツ、ズボンはズボン吊で吊っている。寒さに震えていてもニャーリは全力投球だ。この第1幕では多少怒鳴りつけるような歌い方だ。ブリュンヒルデは白のネグリジェ姿で、寒そうでない。壁が閉まるとジークフリートは窓を開け歌う。ブリュンヒルデはドアを開け、表に出る。再び扉が開くとジークフリートはラインへの旅へと出立するに先立ちブリュンヒルデに指輪を贈る。この指輪、角笛のように肩から背負っている。よく見ると指輪のついた手首の両側を紐で結んでいるのだ。ジークフリートが指輪をはめているのではないのだ。彼女はその腕ごと指輪を受け取るのだ(気持ち悪くないのかな?)。そしてグラーネをお返しに送る。このグラーネ、お爺さんで両手に杖を持っている(ブリュンヒルデは炎に包まれ寝ている間年を取らなかったようだがグラーネは違っていたのか?)。ジークフリートが上着を着るとやはりロシアの農民風。ただし出発に際し黒のオーバーコートを着るのだが、これはなかなか格好が良い。彼はリュックを背負ってノートゥング持ち、グラーネと共に右手のドアから出発する。ブリュンヒルデは壁にかかっている黒の帽子に気づき、彼に持たせる。ジークフリートのラインの旅の間奏曲となり、舞台がぐるぐる回ると船をこぐジークフリート(グラーネは座っている)が現れたり、さすらい人が現れたりする。
第1幕。ハーゲンの館。壁が閉まっており、中央左手のベンチにハーゲンが座っている。扉が開いてグンターが出てきて彼に世間の自分および一族に対する評価を尋ねる。このグンターが田舎紳士風の太った大男で、歩行も怪しげだ。手には「G」の文字が描かれた青の三角形の旗(ペナント)を常に持っている。「神々」では押しなべてグンターはすらっとして少しひ弱で、一方のハーゲンは大きく、強そうな風貌なのだが、この演出では逆を行く。しかもこのKihun Yoon、声量がとてつもない。ハーゲンのジャコブシュを凌駕している。ハーゲンは家名を高めるためにはグンターとブリュンヒルデ、グートルーネとジークフリートの結婚が望ましいと進言する。ド近眼で眼鏡をかけているグートルーネはその話に乗り気だが自信がない。それを察したハーゲンが媚薬のことを匂わすと彼女はせっせとその準備を始める。ジークフリートのホルンの音が聞こえ、舞台が回るとさすらい人や大きな洗濯盥にうつぶせになったラインの乙女たちが次々に見える。グンターの招きに応じ、ジークフリートの船が舞台右手に接岸すると、ジークフリートは爺さんの手を取って上陸させる。ジークフリートがギービッヒの息子はどいつだと問うとグンターは「俺だよ、グンターと言うのだ。」と答える。するとジークフリートは「俺と戦うか、それとも友になるか?」とグンターの喉元にノートゥングを突きつけて問う。グンターは「戦いはやめよう。」と言うので、ジークフリートはノートゥングを机の上に置く。するとグンターはその剣に興味を示して手を出し、ジークフリートは取られると思ったのか剣を引く。それでグンターは指を切ってしまい慌てて包帯を巻く。ジークフリートがグラーネの世話を頼むとハーゲンは爺さんを邪険に扱い、彼の尻を叩いて隣の部屋(厩か?)に追いやる。彼はジークフリートとその宝の話をしだす。そこに眼鏡を外したグートルーネが忘れ薬を入れた酒を差し出す。ド近眼なので彼の顔の近くまですり寄って顔を見つめるのでジークフリートはビックリ。その酒を飲んだ彼はふらっとするとすぐさま彼女に言い寄り、グンターに彼女の名前を聞く。また彼が妻帯者かどうか尋ねるので、グンターは遠回しにブリュンヒルデとの結婚を考えていることを語るが彼女を得る自信がないことも仄めかす。ギービッヒにとって都合の良いところだけすっかり記憶を失ってしまったジークフリートが協力を申し出ると、二人は義兄弟の誓いを立てることになる。ジークフリートはすぐさまノートゥングで腕に傷を付け、ハーゲンの差し出すグラスに血をしたたらせるが、グンターは包帯をほどいて血を出そうとする。それを見てハーゲンはナイフを取り出し彼の腕に切りつけて血を取る。義兄弟の儀式が完了するとジークフリートは彼を急き立てブリュンヒルデのもとに向かう。
場面変わってブリュンヒルデの寝室。彼女が寝ていると妹のヴァルトラウテが訪ねてくるので温かく迎える。ヴァルトラウテはヴァルハラの話をし、またヴォータンが「あの子がラインの乙女たちに指輪を返してくれたら…」とつぶやいたことを話す。そしてブリュンヒルデが指輪を持っていることに気づくやそれを捨てるように懇願する。しかしブリュンヒルデは聞く耳を持たず、やがて奪い合いになる。指輪を奪えなかった彼女をブリュンヒルデは冷たく追い立てるので、ヴァルトラウテは失意の中去って行く。
それと引き換えのようにその場所を取り囲む炎が勢い良く燃え上がり、角笛の音が聞こえるので、彼女はジークフリートが戻ってきたと喜びに震える。しかしそこに現れたのは茶色のスーツを着た田舎紳士だった。その男は「お前を妻にする。喜んで従え。」と言う。テナー声だが、いつものジークフリートの声ではない。ゾルタン・ニャーリもなかなかやるものだ。恐怖に襲われたブリュンヒルデが「あんたは誰なの?」と問うと、その男は「俺はギービッヒで、勇者のグンターって言うんだ。」と名乗る。そしてベッドの上で格闘の末、グンターは指輪を奪い取る。そして「お前は俺のものだ。」と言うと壁が閉まり扉から出てきたのはジークフリートだった。このあたりの変わり身はすごい。(幕)
第2幕。ギービッヒ家の館。壁は締まっており、中央に扉、その右側に窓。アルベリッヒがこの窓の雨戸を両側に開けて「Schläfst du, Hagen, mein Sohn?」とハーゲンに呼びかける。扉が開くと中央にあるのはトイレのようだ。そこにパンツ1枚のハーゲンが腰を下ろしていて、ナイフで自分の腕に傷をつけている。大きな声で笑ったかと思うとトイレから出てきて床に倒れてしくしくと泣き始める。アルベリッヒが話している間にも彼はまたトイレに入り、今度はロープを持ち出し首吊り用の縄を作っている。どうも深刻な情緒不安定のようである。アルベリッヒが立ち去るが、驚いたことに彼は若々しい。ハーゲンよりずっと若く見える。何か意味があるのか?それと片腕の肘から下が無い。と言うことは「ジークフリート」でアルベリッヒは指輪をしていその腕を切り落とされたのだろうか?昨年の「ジークフリート」を観た際に見落としてしまったようだ。この「指輪」は本当に注意深く観ないとだめだ。
壁が閉まるとハーゲンがいつもの格好でベンチに腰かけている。この変わり身の早さ。右手からジークフリートがグンターの格好でやって来る。勿論隠れ兜が頭の上に乗っている。ハーゲンに挨拶をするとドアを開け室内に入るが、すぐに出てくる。この時はジークフリートになっており、隠れ兜を手に持っている。この辺の演出も実にきめ細かい。グートルーネが喜んでジークムントを出迎える。ハーゲンは肩にかけていた角笛を取り出し吹き鳴らし、ギービッヒの男たちに武器をもって集まるよう命ずる。壁が開くと大きな木が切り倒されていて、大きな幹がさかさまに倒れかかっている。切り株も2つある。男たちはここで働いており、武器は持っていない。ここにグンターと黒いドレスのブリュンヒルデが登場。彼が彼女を皆に紹介するが、ブリュンヒルデは上の空のようである。彼が「グンターにブリュンヒルデ、グートルーネにジークフリート」と言うと、彼女は驚く。グートルーネはしきりにブリュンヒルデに対し気遣いを行うが、ことごとく無視されてしまう。彼女はジークフリートの肩から指輪が吊るされているのを見つけるとジークフリートとグンターを問い詰める。彼ら二人の間には意思疎通が通ってない(このグンターはいかにも頭が悪そうだ。)のでグンターは彼に指輪をやっていないと言うし、ジークフリートは彼女からひったくった時の記憶もないのか「竜を退治したときの戦利品だ。」と素っ頓狂な返事をするありさま。怒り狂ったブリュンヒルデは「Verrat! Verrat! 裏切りだ!」と叫ぶので、ジークフリートは「誓いを立てよう。」と言い出す。するとハーゲンが「俺の槍を貸そう。」と言って銃剣を持ち出す。ジークフリートは銃剣に誓い、ブリュンヒルデはハーゲンからその銃剣を奪って誓う。ジークフリートはグートルーネの手を取って祝賀会場に向かい、皆も彼らについて退場し、ブリュンヒルデ、グンター、ハーゲンの3人がそこに取り残される。
ハーゲンは怒り狂うブリュンヒルデを巧みに誘導し、ジークフリートの弱みを聞き出してしまう。最初はグートルーネのことを気遣い反対していたグンターも遂には欲に目が眩んだのか、3人3用の思惑でジークフリートの殺害を誓う。
第3幕。めいめい洗濯盥を持った3人のラインの乙女たちが悲し気にしている。しかし彼女たちはジークフリートの角笛の音を聞くと急に元気になる。そして彼が現れるとしきりに指輪をおねだりする。しかしジークフリートははぐらかせて指輪を渡そうとしない。彼女たちは「ケチ」と言ってそっぽを向いてしまう。彼は彼女たちの気を引こうと指輪を上げるよと言うがすでに信用失墜。彼女たちは彼を信用せず、彼のこれからの運命を語っていなくなる。
ハーゲンの「ホイホー」と言う声が聞こえる。ジークフリートはギービッヒの仲間たちと会合する。ハーゲンは「あんたは小鳥の声を理解できると聞いたぞ。」と言って言葉巧みに彼の生い立ちに話題を誘導する。するとその小鳥がうろつく。ジークフリートがミーメを切り殺した下りまで説明したところでハーゲンは忘れ薬の中和剤を入れた酒を彼に飲ませる。ブリュンヒルデを目覚めさせると彼女の腕が自分に巻き付いてきたと話すと、グンターは「Was hör' ich!」と驚く。そこをすかさずハーゲンが銃剣でジークフリートの背中を刺す。驚いた4人の男たち、次いで2人の男、そしてグンターが「Was tatest du?」とハーゲンを諫めるが、ハーゲンは平然と「偽りの誓いを罰したのだ。」と言い放つ。ジークフリートはブリュンヒルデとの美しい思い出を話し続けながら息を引き取る。彼はギービッヒの館に運搬され、ブリュンヒルデの指揮のもと火葬に付される。その時彼女に導かれ爺さんも殉死させられる。指輪はブリュンヒルデによってライン川に投げ込まれ、それをわがものにしようとしたハーゲンはラインの乙女たちに水中へと引き込まれてしまう。(幕)
終演するとやはりすさまじい拍手。特にナンシー・ヴァイスバッハとゾルタン・ニャーリに対するものはすごかった。ナンシーは本当に安定して素晴らしい声量でブリュンヒルデを歌う。ほかの劇場でもっとチャンスが与えられてよいのではないかと思う。ニャーリは残念ながら二枚目でないので歌唱は文句ないのだが多少違和感を覚える。シャーガー同様、最初から飛ばして最後まで歌いきることのできる数少ないヘルデン・テノールの一人だ。
この公演も非常に満足できた。いつものことだが劇場が引けると食事のことに頭が行ってしまい最終幕のメモを取ることをやらない。その為最終幕の記述はいつも怪しげになってしまう。来年オルデンブルクでは3つのサイクルを上演する予定なので、間違えがあればその時訂正しよう。
盛大な拍手が続き、表に出たのは21:40。今回は迷わず劇場前の「Bestial」に飛び込む。ここでオーストリア産の白ワイン0.2l€5.20とVitello Tonnato€12.50を注文。ワインは安く、ヴィテッロはカツを予想してきたのだが非常に薄い生の肉が出てきた。それにサラダ少しとパンがついてきてしめて€17.70。もちろんクレジットカードOK。チップも必要なし。ここは劇場がはけた後も開いているので非常に助かる。
私のカメラが今回もバッグの中でバッテリーを消費してしまい、1枚も写真を撮ることが出来なかったのが残念。このところこういうことが多すぎる。次のヨーロッパ旅行では必ず補助のバッテリーを持っていこう。
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