mixiユーザー(id:2230131)

2008年06月09日23:48

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修正液

昔は主流だったけど、修正テープが誕生してからは使われることは少なくなりましたね。
だけど僕は、この修正液がわりあい気に入っている。

どこが気に入ってるのかと言うと、ズバリ、「匂い」。
僕が知るところでは、あの独特な匂いは修正液以外では味わえない代物なのだ。
とは言っても、匂い自体が特別に好きなのではない。むしろ臭いと思う。身体に悪そうな薬品の匂いだ。
だけどあの匂いを嗅ぐと、僕は懐かしい少年時代の日々をありありと思い出すことができる。
そこが好きだ。

若き少年の日の僕は、なにも書かれていない空白さえ見つければ、それがテストの裏面だろうと、教師の机の上だろうと、ところかまわず落書きするような子供だった。とにかく絵を描くのが好きだった。大人になっても落書きしていられると当時は思っていた。
家でもよくイラストみたいなのを描いてた。その時によく修正液を使っていたのだが、修正液をたくさん使った記憶はそれっきり途絶えている。

だからだろうか、僕はあの匂いを嗅ぐと、当時に一瞬だけタイムスリップするのだ。
小学4年生の夏休み。クーラーの効いていない小さな部屋で、僕は溜まりに溜まった「夏休みの友」を放ったらかし、夢中でファミコンのキャラクターを模写している。よれたTシャツには汗が染み込み、開け放った窓の外からはセミの鳴き声が聞こえてくる。左手には溶けかかったアイス。足下から扇風機の回転音。青い半ズボン。カブトムシの虫かご。水着のバッグ。そして修正液の匂い。
僕は少しだけ無邪気だった少年に戻ることができる。

人間の知覚の中で、記憶と最も深く関わっているのが嗅覚なんだそうだ。
匂いは大切な(時にわずらわしい)記憶をパッケージして、僕が立っているこの場所まで損なうことなく届けてくれる。

現在は修正テープをよく使用している。
今の僕を、おじさんになった僕はどう感じるのだろうか。
しかし残念ながら、無味無臭のテープは一切記憶を封じ込めてはくれない。
それはどこにも辿り着かない。
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